【ニュースがわかる2024年7月号】巻頭特集は「沸騰」する地球の未来

スクールエコノミストWEB【海城中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は海城中学校を紹介します。

新理科館はまるで“博物館&研究所” 才能を開花させる生徒たちは世界へ

<3つのポイント>

① 理科教育・STEAM教育の拠点となる新理科館

② 生徒の人格形成に重要な役割を果たす美術での自画像制作

③ ハーバードなど海外トップ大学への進学を支えるグローバル教育部

“博物館&研究所”のように知的好奇心を刺激する新理科館

 海城中学高等学校は1992年を改革元年と位置づけ、約30年に亘り学校改革を推し進めてきた。探究的学びを重視するカリキュラムへの移行など、学力偏重、偏差値主義の教育を脱却し、生徒の資質・能力の育成に力を注ぐ。難関大学への高い進学率は維持したまま、「新しい学力」として課題設定・解決能力の育成を掲げ、STEAM教育に注力している。

 昨年度9月に完成した新理科館は理科教育・STEAM教育の拠点だ。実験や観察を通じて自らの手でデータを収集・分析・考察する思考力育成型の教育を行う。物理・生物・化学各2室、地学1室が設置された実験室の設計は教科ごとに異なり、さらに共同実験室も2室設置した。実験室の設備の充実も図り、地学では博物館にあるような流水地形実験装置をはじめ、岩石カッター、研磨のためのグラインダーなども完備。そのほか、各実験室前には陳列棚を設け、地学では鉱石や化石など、生徒の好奇心を刺激する展示物を並べ、各教科をより身近に感じさせる工夫も行う。

 特筆すべきは環境に配慮した設計がなされた新理科館全体が教材化されている点だ。例えば、玄関ホールにはエネルギーの発電・消費状況をモニター表示し、建設時に地下を掘った際の関東ローム層も展示。校舎壁面には調湿効果のある石材を使用し、空調は地熱発電を利用している。緑化された屋上には、太陽光パネルや風力発電機のほか、温室もあり、自然観察や気象・天体観測も可能だ。このように新理科館は生徒の興味関心を刺激するだけでなく、肌で実体験し、ワクワクしながら探究できる“校内博物館”であり“研究所”の様相を呈している。校長特別補佐の中田大成教諭は「新理科館で引き出された興味関心事について、試行錯誤を繰り返し、探究し続ける経験から、生徒たちには学びの本質、楽しさを知ってほしい」とその思いを語る。

 また、同校ではICT教育室(校務分掌)を設置し、情報リテラシーからプログラミング的思考力、発想力の育成を進めている。既に教科を問わずICTを活用した授業が進められているが、生徒の実験分析においても積極的にICTを活用。地学では、生徒の居住地の違いを活用し、各居住地の気象データを収集・分析する、いわゆるデータサイエンスの基礎も実体験しながら学んでいる。

2学期から運用が始まった「Science Center(新理科館)」

20時間の自画像制作で自分自身と向き合う

 同校では、STEAM教育の創造性教育を担う美術にも力を入れる。中1、2学期には自画像制作に10週間20時間かけて取り組む。芸術科副主任の天野友景教諭は「自分の立ち位置や目標が定まっていないこの時期に自分に向き合い、考える時間を持つことは人格形成上重要」とその意義を語る。また、美術・芸術は正解のない世界でもある。自画像を構想し、描く過程での試行錯誤は、答えのない問題に取り組む難しさを、身をもって体験し、そこから自分なりの答え(完成)を導き出す力へとつながる。

 さらに授業内の「古今東西美術話」ミニ講座では、美術が関係するさまざまな話題を解説ではなく問題提起の形で提供。これは、美術が社会と密接に結びついていることを伝え、美術というフィルターを通すことで生まれる新たな視点の発見を生徒に促す狙いだ。