スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は獨協中学校を紹介します。
ビオトープから始まった環境教育は生徒たちの社会貢献意識と進路を育む
<3つのポイント>
①21世紀を生きるために必要な環境教育に力を入れている
②環境活動やボランティア活動で、誰かのために行動する喜びを実感
③他人を敬い優しくすることができる「日本型地球市民」を目指す
ドイツの環境哲学を秘めた環境教育 江戸東京野菜を育て高い評価を得る
2023年に創立140周年を迎える獨協学園は、日本でも有数の歴史と伝統をもつ学校。設立当初からドイツと深いつながりがあり、国際的に活躍できる人物を育てることに注力してきた。
1970年頃、ドイツでは開発による環境破壊が大問題となっていた。のちに「緑の党」を立ち上げるペトラ・ケリーらの市民運動が高まり、環境運動のシンボルとしてビオトープが誕生。ビオトープには「社会変革」の意味がある。獨協中学・高等学校の「緑のネットワーク委員会」は、ドイツ人の血を引き、同校の卒業生でもある塩瀬治教諭が顧問を務め、2004年に発足。中1から高2まで50名ほどで構成されており、2006年には校内にビオトープを設置した。その活動は、ビオトープの管理、屋上緑化、環境ファシリテーター活動、文化祭での発表、ボランティア・アワードへの参加など多岐にわっている。
委員会の2022年のテーマは「江戸東京野菜」。江戸東京野菜とは、江戸時代から明治、大正、昭和にかけて現在の東京23区や多摩地域で栽培され、現在まで品種改良がほとんど行われずに栽培されてきた伝統野菜で50種が登録されている。江戸東京野菜の普及に力を尽くしている卒業生の協力を得て、内藤カボチャ、雑司ヶ谷ナス、馬込半白キュウリを植栽した。毎年育てているゴーヤ、ヘチマ、ミニトマトなどとともに屋上菜園で栽培に取り組んだ。
8月には、委員会の生徒8名がこの取り組みの中で得られた知見を東京農工大学で開催された「日本環境教育学会」第33回年次総会で発表。また、高校生自然環境サミットでも発表を行い、高い評価を得た。
地域の小学生や高齢者と交流を重ね社会の人と接点を持ち大きく成長
環境ファシリテーター活動は、2016年にスタート。防水加工した木箱で獨協オリジナルの箱ビオトープを製作し、近隣の公立小学生に設置。維持管理のノウハウを子どもたちにレクチャーした。
また環境をテーマにした出前授業も生徒たちが行った。さらに学校がある文京区内の重度障がい者施設内に、箱ビオトープを設置して生きものとのふれあい空間をつくったり収穫した作物を届けたりするなど、交流を重ねてきた。委員会のメンバーは、小学生や施設の方々が喜んでくれたことがうれしく、人の役に立つ喜びを感じていた。
「近隣の小学校の生徒やたちが野菜を収穫するため来校したり、本校の生徒が出前授業を行う活動を行ったりして、地域の人たちに社会福祉貢献活動を広げていくことが重要だと考えています。生徒が純粋な気持ちで他者と関わることで社会貢献意識が高まりました。社会の人と接点を持つ活動は人間的成長につながり、彼らの未来に大きな財産になると考えています」と塩瀬教諭は語る。
こうした委員会の活動は、さだまさし氏が設立した公益財団法人「風に立つライオン基金」主催の「高校生ボランティア・アワード」にも選出されるなど注目を浴びている。
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