新型コロナウイルスが広まってからすっかり増えたテレワーク。みなさんのおうちの人も家で仕事することが多くなっているかもしれません。
テレワークってこれまでの仕事の仕方と何が違うのでしょうか。国にはデジタル庁という新しい役所もできました。仕事のデジタル化の良い面と課題を見てみましょう。【塩崎崇】
◇なぜテレワークするの?
テレワークとはパソコンなどを使って時間や場所にしばられずに働くことです。英語のtele(テレ、遠い)とwork(ワーク、働く)を合わせた言葉です。もともと、子育てや介護など個人の事情に応じて働ける「柔軟な働き方」を広げるため、政府が進めていましたが、新型コロナウイルスが広がって増えました。
会社にたくさんの人が集まるとそこで感染するリスク(危険性)が高まります。書類を渡したり道具を一緒に使ったりすることで感染する場合もあります。感染が広がると、会社全体として仕事ができなくなってしまう恐れもあります。
テレワークは会社に行かず、主にパソコンやスマートフォンなどで連絡を取り合い仕事します。仕事の場所は自宅が多いですが、喫茶店やテレワーク用の施設などさまざまです。
◇何ができて何ができないの?
いまの技術を使えば、ほとんどの視覚(目から入る)情報と音声(耳から入る)情報はテレワークで伝えられます。1か所に集まらなくても、パソコンやスマホの画面を通して会議をしたり、作った書類をみんなで見たり、スケジュールを共有したりできます。コミュニケーションツールも、電話、テレビ会議、メール、通信アプリ……とたくさんあります。
しかし「会社勤め」の場合はまだいいのですが、テレワークがしにくい仕事もあります。農林水産業や、警察・消防・医療など人命を守る仕事のほとんどはテレワークができません。レストランやホテル、ものづくりの工場なども難しいです。ロボットだけというわけにはなかなかいきません。
◇どのぐらい広がっているの?
調査研究などを行う日本生産性本部はコロナの感染拡大後、定期的にテレワークについてアンケートしています。今年7月に働く人1100人にネットで聞いたところ、テレワークを行っている人は20・4%で、行っていない人が79・6%でした。首都圏などで1回目の緊急事態宣言の発令が続いていた昨年5月は31・5%が行っていましたが、昨年7月20・2%∇昨年10月18・9%∇今年1月22・0%∇今年4月19・2%--と2割ぐらいで横ばいです。
「テレワークの課題」を複数回答で聞くと、多い順に①「部屋や机など家の環境」(41・5%)②「Wi―Fiなど通信環境」(36・6%)③「職場に行かないと見られない資料がある」(35・3%)でした。調査担当者は「働く側からすると仕事する環境が整っていないのが大きい。会社側はテレワークのメリットが見えていない」と話しています。
◇これからどうなるの?
政府はコロナ対策で人の流れを減らすため、テレワークなどを活用し、職場への出勤者数を7割減らすことを目標にしています。今後、テレワークはどうなるのでしょうか。日本生産性本部の担当者は「間違いなく前より進むと思う」と言います。働く側は新しい働き方に慣れてきましたし、会社側は道具や仕組みを整えつつあるからです。
しかし7月の調査結果にはテレワーク離れの兆しも見えます。働く人のうち1週間に1日も出勤しない「完全テレワーカー」は2・4%でした。昨年5月には10%を超えていました。調査担当者は「テレワーカー自身がオフィスに戻りたいという気持ちが強まっている」と見ています。
また、働く人からすると会社の人から見えないところで仕事するため、仕事の評価が気になります。働く時間(オン)と自分の時間(オフ)の切り替えが難しい面もあります。会社側にとっては会社で働く場合に比べて労働時間の管理がしにくいなど課題もあります。
◇新しい役所ができるの?
テレワークだけではなく、政府は社会全体のデジタル化を進めようとしています。その司令塔となるのが、1日スタートの新しい国の役所「デジタル庁」です。総理大臣がトップとなる500人規模の組織で、民間の人材も加わります。
コロナ感染の広がりをきっかけにデジタル化の遅れが浮かび上がり、壁になっている役所の縦割りを打ち破ることを目指します。押印や紙のやり取りを減らすなど行政手続きの簡素化を進め、関係する予算や人材の育成も取り仕切ります。
デジタル庁設置とセットで個人情報保護法も変わります。個人情報保護法はこれまで、民間、国、独立行政法人の三つに分かれていましたが一つになります。ルールが一つになるのでデータのやり取りがしやすくなる半面、個人情報が漏れたり国の監視が強まったりするとの心配も出ています。(2021年09月01日掲載毎日小学生新聞より)