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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

気になる数字「1兆円」
長く続く保証なし

週刊エコノミスト編集部が執筆する毎日小学生新聞「15歳のニュース」内コラム「これって経済? 」は、経済にまつわる数字を解説します。

今回の気になる数字は「1兆円」。この数字は、大手総合商社の三菱商事が2023年3月期の最終利益の見通しで、実現すれば商社初の1兆円突破となります。資源高などで苦しい状況が続く今、なぜ1兆円もの利益になる見通しとなったのでしょうか。

 大手総合商社首位の三菱商事が2023年3月期の最終的な利益が1兆300億円になる、という見通しを発表しました。実現すれば商社初の1兆円突破だ。他の商社も好調で大手5社の利益は合計で4兆円に届く可能性もあります。

 業績を押し上げたのは日本経済を苦しめる資源高円安です。

 商社は原油や天然ガス、石炭などの資源開発への投資に力を入れてきました。これら資源価格がコロナ禍からの世界経済回復や、ウクライナ戦争の影響で高騰。

 三菱商事の場合、豪州で生産する石炭などの利益がこの中間決算で前年の2倍以上となる3200億円に跳ね上がりました。

 円安も商社の利益を押し上げました。海外で稼ぐ利益の大半はドル建てですが、三菱商事は1円の円安で50億円も利益が上乗せされます。ただ円安と資源高は長く続く保証はなく、各社とも為替や資源高の要因を除く実力値で将来を見ています。

 さらに地球温暖化につながる二酸化炭素を多く排出する石油や石炭などから脱却しようとする「脱炭素」が世界のトレンドとなるなかで、商社は洋上風力などの再生可能エネルギー、水素やアンモニアなど次世代燃料の開発にも力を入れている。

 しかし、これら脱炭素ビジネスが商社の資源開発のように数千億円を稼ぐ収益源に育つかは未知数だ。「いま稼いだ分をいかに未来の成長への投資につなぐか」で、各社はしのぎを削っているようです。

(「15歳のニュース」 22年11月26日掲載より)


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