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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

アイヌ文化を知ろう~秋の祭り~【ニュースがわかるの本棚】

突然ですが、みなさんに問題です。下記①~③はすべて北海道の地名ですが、なんて読むのでしょうか?

① 女満別
② 来止臥
③ 馬主来

みなさん、何問わかりましたか?
(出題した地名の答えは記事最後で答え合わせができます。)
このように難しい読み方をする地名が、北海道には数多くあります。

なぜ、大人でも読めないような地名が多いのでしょうか。
その理由は、「アイヌ語」をがんばって漢字にあてた結果、難しくて読めないような地名が生まれたからです。

今回のテーマは、「アイヌ」にまつわるお話しです。

先ほどの地名クイズ他、アイヌで語り継がれてきた物語を通じ、アイヌ文化を親子で楽しく学べる『アイヌ民族27の昔話』から、一部抜粋してご紹介したいと思います。


アイヌ語では、1年をサㇰパ(夏の年=春夏)とマタパ(冬の年=秋冬)の二つに分ける言い方があります。秋はマタパの始まりにあたり、コタン(村)の人々が集まって、祭り(コタンノミ)をし、冬の間の幸福と安全をいのります。ノミは「いのり」という意味です。

絵・小笠原小夜/提供・北海道新聞社
絵・小笠原小夜/提供・北海道新聞社

祭りの間は、静かな時間とにぎやかな時間が交互にやってきます。祭りの数日前から大勢の人が集まって、ワイワイと料理をしたり、イナウ(木幣…いのりの時に男性が木をけずって作るもの)をけずったりします。団子の粉を作る人は、きねつき歌のリズムで粉をつきます。木の実のペーストを作る人は、木の実に「目をつぶりなさい」と歌うように語りかけ、実をつぶします。歌とともに準備が進みます。

「いのり」が始まると、みんな静まりかえり、歌うようないのりの声だけがひびきます。長いいのりが終われば、昔話と歌、おどりの時間です。シーンとはりつめた空気が、一転して笑顔と笑い声であふれます。はじめにエカシ(おじいさん)とフチ(おばあさん)がタㇷ゚カㇻという特別な歌とおどりを披露(ひろう)します。

歌とおどり、昔話は疲れて眠くなるまで続きます。おどりには自然のようすを表したもの、ゲームのようなもの、体力比べや芝居のようなものもあります。十勝管内本別町(ほんべつちょう)には「どんな歌でもおどりでも雲の上までのぼっていって、カムイ(神様)たちが聞くものだ。だから決してデタラメに歌ったり、おどったりするものではない」という言葉があります。

人々の輪の中に、見たことのない、しかし、おどりが特別上手な人がいて、実はそれは人の姿に化けた「なべ」のカムイだったという昔話もあります。 歌やおどりもカムイへのおもてなし。だからみんな楽しみながらも真剣なのです。


本記事のはじめに、みなさんに出題していた地名クイズの答え合わせをしたいと思います。

みなさんは何問わかりましたか?次回は11月3日に配信を予定しております。

紹介した本はコチラ

タイトル:
ミンタㇻ1
アイヌ民族 27の昔話
著者:北原モコットゥナㇱ(編著)
   小笠原小夜(絵)
出版社:北海道新聞社
定価:1,980円

全国書店等にてお買い求めいただけます。

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著者プロフィール

[編著]北原モコットゥナㇱ(きたはら・モコットゥナㇱ

1976年、東京都生まれ。北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授。

[絵]小笠原小夜(おがさわら・さよ)

1973年、小樽市生まれ。イラストレーター。
この本のもととなった新聞連載「ミンタㇻ」のスタート時から、現在までイラストを担当。