「からすのパンやさん」や「だるまちゃん」シリーズなどで知られる絵本作家、かこさとし(加古里子)さん(1926~2018年)が、3月31日で生誕100年を迎えます。これまで600点を超える作品を発表してきました。生誕100年を記念して、展覧会や書店のフェアが開催されています。92歳で亡くなるまで絵本を描き続けたかこさんは、どのような人生を歩み、絵本にどんな思いを込めたのでしょうか。
どんな絵本を描いたの
かこさんは1959年に「だむのおじさんたち」でデビューしました。1967年に「だるまちゃんとてんぐちゃん」(福音館書店)、1973年に「からすのパンやさん」(偕成社)が出版され、世代を超えて読み継がれています。
ユーモアあふれるゆかいな物語絵本のほかに、多くの科学絵本も描きました。「かわ」(福音館書店)は、山に降った雨から生まれた小さな流れが川となり、やがて海へと注ぐ旅が描かれています。そのほかに「海」「地球」「宇宙」「人間」(いずれも福音館書店)もあります。
エジプトのピラミッドの歴史や構造、宗教について描いた「ピラミッド」(偕成社)は大きなスケールの内容です。ほかに、行事の由来を紹介する絵本「こどもの行事 しぜんと生活」12巻、草花遊びや折り紙、あやとりなどの遊びを紹介する絵本「あそびずかん」4巻(いずれも小峰書店)などもあり、幅広いジャンルの作品を世に送り出しました。
アトリエで絵本を作成するかこさとしさん=神奈川県藤沢市で2005年
どんな子ども時代だったの?
かこさんは1926年、現在の福井県越前市に生まれました。小学2年生の時に東京へ引っ越しますが、1937年に日中戦争が、1939年には第二次世界大戦が始まりました。かこさんは飛行機にあこがれ、戦闘機のパイロットになるため士官学校を目指します。しかし、視力が悪かったため断念しました。
高校2年生になると戦争が激しくなり、高校生も軍需工場で働かせられました。友達に会えず、交流を図るために俳句や詩を書いて文集を作り、回覧していました。ペンネームの「里子」はこの時に使っていた俳号です。
3年生はなくなって切り上げで卒業し、1945年に東京帝国大学(今の東京大学)工学部応用化学科に入学します。空襲で家を失い三重県へ疎開し、8月15日に終戦を迎えました。
9月に大学の授業が再開され、演劇研究会に入ります。舞台装置のデザインや作製、子ども向けの演劇脚本を書き始めました。
絵本デビューまでは?
東京大学を卒業後、化学会社に就職しました。結婚を機に、現在の神奈川県川崎市に引っ越しました。近所の子どもたちに手作りの紙芝居を披露したり、絵の指導をしたりする地域に根差したボランティア「セツルメント活動」をしていました。
そこで子どもたちの人気になって、本の編集者の目にとまり、1959年に「だむのおじさんたち」でデビューしました。1970年に神奈川県藤沢市へ転居し、亡くなるまで50年近く住みました。
かこさんは生前、「絵本づくりのすべては子どもさんに教わった」「子どもさんの反応ほど厳しく正しいものはない」と話していました。徹夜で描いた紙芝居を見せても、途中で1人、2人といなくなることもあったそうです。かこさんは「子ども」には、必ず「さん」とつけました。
原点は戦争体験
視力が悪かったため士官学校へ行けなかったかこさんは、これまで励ましてくれた先生から「なんだ、軍人になれんようなやつか」と言い放たれたそうです。しかし、航空士官になった友人たちは、特攻隊として戦地へ送られ、次々と亡くなりました。
かこさんは終戦後、「生き残ったというより、死にはぐれた」と悩み苦しみました。そして、過去に軍人を目指した自分の無知さを反省し、残りの人生を、未来を作る「子どもたちのために生きる」と決心します。戦争体験をもとに「自分で考えて行動する子どもたちが育ってほしい」と絵本の創作に力を注ぎました。
晩年は、「戦争の本を作りたいが、なかなかできない」と話していたそうです。かこさんが亡くなった後、見つかった原稿をもとに、戦争をテーマにした絵本が2冊出版されました。高校時代の体験を描いた「秋」と、孫の中島加名さんが絵を手がけた「くらげのパポちゃん」(いずれも講談社)です。
展覧会も開かれるよ
国立科学博物館(東京都)で企画展が開催されるほか、出身地の福井県、長年住んでいた神奈川県でも展覧会が開かれます。
24日から国立科学博物館で始まった企画展「かこさとしの科学絵本」は、代表作「かわ」「海」「地球」「宇宙」「人間」の原画や下絵が展示され、科学博物館の研究者が絵本のシーンを解説しています。絵本に出てくる古生物などの標本資料やDNA(遺伝情報を収めた物質)の模型も並び、科学博物館ならではの展示が楽しめます。
かこさんの未完の大作「宇宙進化地球生物放散変遷総合図譜(生命図譜)」と、生命図譜に通じるものとして描かれた「生命の発生と進化」も展示。全長約5メートルもの「生命図譜」は、宇宙の始まりから今にいたる生き物の歩みが描かれています。
また、全国の書店で「かこさとし生誕100年フェア 子どもと未来をみつめて」が開催中です。代表作やロングセラー作品をそろえています。
(2026年3月25日毎日小学生新聞より)
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かこさとしさん 生誕100年【ニュース知りたいんジャー】
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