いまから15年前、福島県にある東京電力(東電)の福島第1原子力発電所が津波におそわれました。広い地域に放射性物質が飛び散る事故が起き、後始末が続いてきました。将来にわたって解決しなければらない宿題が、積み残されています。
どんな事故だったの?
福島第1原発は、太平洋に面した福島県大熊町と双葉町にまたがって建ち、原子炉6基がありました。作った電気は東京などの首都圏へ送られていました。2011年3月11日に東日本大震災が起きた時、1~3号機は運転中で、4~6号機は検査で止まっていました。
原発は、原子炉の中で核燃料が出す熱を利用してお湯を沸かし、水蒸気の勢いで発電機を回して電気を作ります。異常が起きても、原子炉を「止める」「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」の三つが守られるように設計されています。
福島第1原発は津波で非常用の電源が失われ、原子炉を冷やせなくなりました。1、3、4号機は大量に発生した水素ガスが爆発して建物がこわれ、2号機も原子炉がこわれて大量の放射性物質をまき散らしました。
1~3号機では、冷やせなくなった核燃料が自分の熱で溶け落ちる「炉心溶融」(メルトダウン)が起きました。世界の基準で「レベル7」という最も深刻な事故でした。
東京電力福島第1原発。(左から)4号機、3号機、2号機、1号機=いずれも2月9日、毎日新聞社ヘリから
いまも住めない場所があるの?
放射性物質は、放射線を出す物質です。福島第1原発事故では、核燃料のウランがさまざまな放射性物質を生み出し、大気中に放出されました。この中でセシウム137の放射能(放射線を出す力)が半分に減るまでには30年かかります。
人が放射線を受けることを「被ばく」といいます。放射線をたくさん浴びると、体の具合が悪くなります。福島第1原発事故が起きた後、政府や自治体は避難指示などを出し、最も広い時で福島県全体の面積の約12%におよびました。地震や津波による被災者をふくめ、福島県の避難者は最も多い時で16万人を超えました。
土
をはぎ取
るなどして放射性物質
を取
り除
く「除染
」を済
ませたうえで、住民
が帰
れる区域
が徐々
に増
えました。ただ、いまも避難指示
が続
いて人
が住
めない「帰還困難区域
」は、7市町村
の一部
に計
約
309平方
キロメートルが残
っています。福島県
全体
の面積
で見
ると、約
2.2%にまで減
りました。
事故後の原発はどうなっているの?
東電は、福島第1原発の原子炉などの施設を解体してなくす「廃炉」の作業を進めてきました。原発事故では、核燃料が金属製の容器などを巻き込んで溶け落ち、冷えて固まった「燃料デブリ」ができました。
燃料デブリは1~3号機に計約880トンあると推定され、周りの放射線量は人体に危険な高さです。2号機で2024年11月から釣りざお式の装置で試験的な取り出しを2回行ったものの、回収できたのは計0.9グラムだけです。
東電は41~51年の廃炉完了までに燃料デブリを全て回収する計画です。30年代初めから本格的な取り出しを始める予定でしたが、準備に時間がかかることが分かり、37年度よりも後にまで遅れることになりました。
また、原子炉などの周りには地下水や雨水が入り込んで放射性物質をふくむ「汚染水」が発生し続けています。東電はほとんどの放射性物質を取り除いた「処理水」にして、23年8月から少しずつ海に流しています。
除染した土はどうするの?
福島県内で除染した土は、大熊町と双葉町にまたがる「中間貯蔵施設」で保管されています。その除染土の量は、東京ドーム11杯分の約1400万立方メートルにおよびます。2045年3月までに福島県外で最終処分することが法律で決まっています。
最終処分する量を減らすため、政府は、放射性物質の濃度が一定レベルを下回る土については道路や農地などで使う考えです。再利用する土には「復興再生土」という名前を付けました。
しかし、再利用は進んでいません。東京都新宿区や埼玉県所沢市などで計画されましたが、住民らの反発を受けてつまずきました。政府は理解を広げようと、総理大臣官邸や国の役所の庭や花壇で使っています。
福島県大熊町の中間貯蔵施設。奥は福島第1原発
私たちの未来に関係あるの?
福島第1原発事故当時、日本国内には原発が54基ありましたが、全てがいったん停止しました。その後、新しく「原子力規制委員会」という国の組織が設けられ、審査基準が厳しくなりました。これまでに9発電所で15基が再稼働しています。
今年1月には、福島第1原発事故を起こした東電が新潟県の柏崎刈羽原発6号機を再稼働させました。全国各地で原発と無関係ではいられません。
政府は福島第1原発事故後、できる限りエネルギーを原発に頼らないようにする方針でしたが、最大限活用する方針に変わりました。高市早苗・総理大臣は2月20日に国会の演説で「原子炉の再稼働加速に向け、官民を挙げて取り組みます」と述べました。
除染土を保管する中間貯蔵施設のエリアに土地を持つ人たちでつくる「30年中間貯蔵施設地権者会」の会長を務める門馬好春さん(68)は、15年たっても廃炉や除染土の最終処分が進まない現状に「汚してうばった土地をみんなきれいにして返してほしい」と訴えています。
福島県外の人や大学生らと対話を重ねていて、「100年後、1000年後、1万年後の子どもたちにバトンを渡していくというのが私たち大人の責任。いまの子どもたちも、いろいろな人から事実を教えてもらい、人ごとではなく、自分のこととして問題を考えてほしいです」と話しています。
(2026年3月11日毎日小学生新聞より)
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福島第1原発事故から15年 積み残された宿題【ニュース知りたいんジャー】
https://www.newsgawakaru.com/news/260311