科学の進歩により、人間の体をめぐる解明が進んでいます。「人生100年」は聞き慣れたことばになりましたが、読者の皆さんが大人になるころには120歳まで生きられる時代になっているかもしれません。誰も経験したことのない長い人生をどう送るか、一緒に考えてみましょう。(「Newsがわかる2026年3月号」より)
まずは、人間が年老いて死んでいく老化のメカニズムと、研究の最前線について、東京大学の中西真教授に教えてもらいます。
長生きする動物にゾウガメがいます。100年以上生きます。アフリカ大陸に暮らすハダカデバネズミも長生きです。こうした動物の多くは老化細胞が体にたまりにくく、寿命を迎えるまでほとんど老化しないと考えられています。
ゾウは老化しますが病気になりにくい。不思議ですね。その仕組みがわかれば人間の老化も防げるのではと研究を重ねています。

70歳前後まで生きることが多いゾウ
老化研究はいま、世界で高い注目を集めています。わたしたちのチームは老化細胞が体内で生き延びるのにGLS1(グルタミナーゼ1)という酵素(体の中で起こるさまざまな化学反応を引き起こす物質)が必要だと突き止めました。この酵素があることで老化細胞は死なず、体内に残り続けるのです。
そこで、わたしたちはGLS1の働きを止める薬「GLS1阻害薬」を高齢マウスに注射しました。すると注射しなかった高齢マウスに比べて長時間、棒にぶら下がっていられました。筋力が回復したのです。その他にも、腎臓、肺、肝臓の機能が改善しました。

若いマウスは約200秒つかまっていられたが、高齢マウスは約30秒程度だった。しかし、GLS1阻害薬を注射した高齢マウスは約100秒まで延びた。「人に当てはめると80歳の体が50~60歳くらいの筋力に若返ったといえます」と中西さん
人間の最大寿命は統計学(得られたデータを分析し、傾向を見いだす学問)的な調査によっておおよそ120歳だということがわかっています。「GLS1阻害薬」が人間にも有効なら100歳まで働き、120歳まで余生を楽しめる世界が実現する可能性もあります。
現在の科学では、なぜ人間の命は120年くらいで終わるのかわかっていません。老化を止められたとしても、生き物は必ず死にます。何が生命のスイッチをオフにするのか。これも、わたしにとって関心があるテーマです。
「GLS1阻害薬」が人間にも有効かどうか、今後の検証が必要ですが、マウスは同じ哺乳類なので人間にも同じ効果が望めると期待しています。しかし、誰もが飲める薬として承認されるのは先になるでしょう。
老いの不安から解放されれば、人々はより寛容になり、老化以外の理由で健康を損なったり、社会の助けが必要だったりする人たちを支えられるのではないでしょうか。
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