学校が休みの日は、平日よりたくさん寝てしまう――。休日に“寝だめ”をするのは、日ごろの睡眠不足を補うためで、常に「睡眠不足」だという証しです。「日本の小中学生はとにかく睡眠不足。もっと寝るべきです」と力を込める睡眠研究の第一人者、柳沢正史さんに、「頭がさえて勉強の効率が上がる」小中学生の睡眠について教えてもらいました。(「Newsがわかる2026年1月号」より)
神経系を持つ生き物、つまり全ての「動物」は毎日、眠ります。その睡眠は実に多様ですが、ほ乳動物に限ってみても、ほとんどが寝たり起きたりをくり返す“コマ切れ睡眠”です。これを多相性睡眠といいます。一方、長時間まとめて一度だけ眠る単相性睡眠をとるのが霊長類、特にヒトを含む大型霊長類です。
◆驚きの動物たちのおもしろ睡眠

高度に発達した脳を回復させるため、夜間にまとめて深く眠る。縄文時代からふとんで寝ていたとされる。

親は外敵に襲われる危険があるため、立ったままうとうとする「立ち寝」をする。子ゾウは親に守られて横になって眠る。おとなのゾウで3時間ほど眠る。

最近の研究で、卵を温めたり、ヒナを育てたりしているヒゲペンギンの親は、1回平均たった4秒の睡眠を1万回(計11時間)以上とっていることがわかった。

イルカやクジラは水面に上がって呼吸をする必要があるので、泳ぎながら眠る。大脳の右半球と左半球とが交互に眠る「半球睡眠」を行う。左脳が眠っている時、右目は閉じている。

ツバメやカモメ、アホウドリなど何日も飛び続けなければならない渡り鳥も、飛びながら半球睡眠をする。

マグロやカツオなどは、泳ぐことでエラの中に酸素を取り込むため、一日中泳ぎ続ける。夜に泳ぐ速度が少しだけ落ちる時に眠っている
大型霊長類の中でも、夜に深く続けて眠る能力を得たのはヒトだけです。それにより脳が発達し、火をたく、家を建てるなどして、より安心して眠れる環境をつくってきました。眠りが充実することで、さらに頭がよくなる。こうして眠りと脳は共に進化してきたといわれています。
それなのに今、日本人の睡眠時間は、世界でもっとも短い。眠りと脳の共進化によっておとなで7~8時間と最適化した睡眠時間を簡単に削ってはいけないのです。

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