世界の中でも地震がよく起きる「地震国」である日本。地震が起きると、全国に張り巡らされた観測網が揺れの様子をいち早くとらえ、震度や震源、マグニチュードといった情報が速報されます。でも一体、どのようにして揺れを記録しているのでしょうか。明治時代から、1995年の阪神大震災を経て現在まで、観測機器の移り変わりを通じて、そのしくみを見ていきます。
そのしくみは「振り子」に例えられます。振り子を持った手を速く振ると、手だけが動いておもりは止まったままになります。明治時代に登場した機械式の地震計は、この原理を利用しました。おもりについた針が、地面と一緒に動く黒い紙をひっかいて、地面が動いた幅など、揺れの様子を記録していたのです。
複数の地震計があれば、どこで地震が起こったか(震源)を求めることができます。
震度は明治時代から長らく、体での感じ方や建物被害から見積もられていました。現在は機械で自動的に計算され、10段階の震度階級で発表されています。
震度の自動計算には、地面がどれだけ速く動いたかを示す「加速度」が使われています。この加速度を観測する地震計(加速度計)のうち、特に震度を算出する機能をもったものを震度計といいます。つまり、震度計は地震計の一つということです。
震度計は、東西方向と南北方向(横の動き)、上下方向(縦の動き)の3方向で加速度を観測しています。3方向を一つに合成処理するなどして、最終的に0・1刻みの「計測震度」を算出します。
0~7の震度階級には、それぞれ当てはまる計測震度の数値が決められています。例えば6.0以上6.5未満なら「震度6強」に、6.5以上なら「震度7」になります。
地震のニュースでは、震度とマグニチュードは合わせて報道されることが多いです。マグニチュードは、発生した地震の規模を表すものです。「地震がもっているエネルギーの量」だと考えてください。そのため、一つの地震に対しマグニチュードは一つですが、震度は場所によって異なります。
マグニチュードは、アルファベットのMを使って「M7」などと表されます。なお、Mの数値は、0.2大きくなると地震のエネルギーは約2倍に、1大きいと約32倍になるという関係があります。
原理自体は変わりません。ただ戦後、弱い地震の観測や、観測データをより早く伝えることが求められてくると、1950年代には振り子に磁石を付けて揺れの速度を電気信号に変換する感度の良い電磁式の地震計が主流となりました。コイルと磁石を近づけて動かすと電気が流れる現象を利用しています。これにより、起きた地震の性質が細やかに分かるようになりました。
震度観測を人の体感や建物被害から、機械での観測に切り替えることになったのは、91年になってからのことでした。ただ、このタイプの電磁式地震計の中には、大きな揺れで測れる数値の上限を振り切れてしまうものもありました。
そこで、振り子が動こうとするとその動きを電磁石で止めるしくみが取り入れられました。電磁石で加えた力の激しさを加速度として計測するタイプのものです。振り子自体が動かないため、振り切れる心配もありません。
国内には震度を計測する約4300か所の震度観測点と、震源やマグニチュードを調べる約1800か所の地震観測点が整備されています。特に震度観測点は、1995年の阪神大震災を受けて、震度の情報をより災害の初めの対応に活用できるよう、各市町村に最低一つは置かれるよう大きく増やされました。
さらに気象庁は、加速度計(震度計)や長い周期の揺れもとらえる「広帯域地震計」などが一体となった観測点も設置しています。広帯域地震計は、巨大地震のマグニチュードの決定などに使われます。
ただ、2011年の東日本大震災では、その広帯域地震計も振り切れ、マグニチュードを決めるのに時間がかかりました。このため、津波の高さが小さく見積もられた津波警報が出てしまいました。現在は、振り切れることのない「広帯域強震計」という機器も全国80か所に置かれています。
(2025年4月23日 毎日小学生新聞より)

過去の地震の記録から関東大震災を予言した地震学者、今村明恒博士=1924年撮影
雑誌のご購入ご希望の方は「ブックサービス」まで

上のバナーをクリックすると「ブックサービス」につながります。