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地方鉄道守る ニタマ駅長の10年【毎小鉄道がわかる】

鉄道150周年

 和歌山市と和歌山県紀の川市を結ぶ和歌山電鉄貴志川線で、三毛猫「ニタマ」(メス、11歳)が駅長として活躍しています。廃線寸前でしたが、初代駅長「たま」がブームを呼んで全国からファンが押し寄せ、地方鉄道再生のモデルになりました。新型コロナウイルスの影響が続く中、再び試練を迎えています。

 駅長を務める貴志駅(紀の川市)で1月5日にあった就任10年の記念式典で、ニタマは執行役員から社長代理になりました。

2015年に「たま2世駅長」に就任し、辞令を交付された時のニタマ=和歌山県紀の川市で

 2010年、子猫が岡山市内の道路でひかれそうになり、通行人に助けられました。洗うと三毛猫とわかり、当時たまで有名になっていた和歌山電鉄の親会社、岡山電気軌道(本社・岡山市)に託されました。この猫がニタマです。12年1月に和歌山に赴いて伊太祈曽(和歌山市)駅長に就きました。

 貴志川線は、1916年開業。自動車の普及などで赤字におちいり、2006年に岡山電気軌道が経営を引き継ぎ、和歌山電鉄として再スタートしました。たま駅長が誕生したのは07年1月。駅売店の飼い猫で、物おじしない様子を見て、小嶋光信社長が無人駅の駅長にしました。たまは大人気になり、年間200万人を割っていた乗客は08年度には約220万人に急増しました。

たまのあとを継ぐ

 伝説的なたまの「部下」となったニタマ。仕事ぶりはマイペースで、小嶋社長いわく「仕事はきちんとしてくれるけど、サービス残業はしないタイプ」。15年にたまが天国へ旅立った後は大役を引き継ぎ、イベントに参加するなど大忙しに。21年には地域を盛り上げた功績で県から「爵位」も受けました。

 ニタマの10年は会社も大変な時代でした。猫駅長効果などで乗客数は15年度に232万人にまで増えましたが、17~18年には台風被害で赤字がかさみ、コロナのせいで外国人観光客は消え、通勤・通学客も激減しました。21年12月、会社は生き残りをかけ「たま電車ミュージアム号」の運行を始めました。黒字を願った漆黒の内装も外装も、たまたちのイラストなどが777匹ちりばめられています。

 00年度以降、21年4月までに全国で45路線1157・9㌔㍍の鉄道・軌道が廃止され、地方鉄道の現状は厳しいです。しかし、猫駅長は地方鉄道の大切さを社会に気付かせてくれました。猫の手を惜しみなく貸してくれるニタマの、さらなる活躍が期待されます。【水津聡子】
                 (2022年2月21日毎日小学生新聞より)


 毎日小学生新聞は7月21日から9月20日まで、「鉄道開業150年」のスタンプラリーを展開中。毎日、紙面に掲載されるスタンプを専用台紙(7月21日、22日毎日小学生新聞)に貼って応募すると、応募者全員の名前が紙面に掲載(希望者のみ)されるほか、抽選で電子辞書のプレゼントもあります。