週刊エコノミスト編集部が執筆する毎日小学生新聞「15歳のニュース」内コラム「これって経済? 」は、経済にまつわる数字を解説します。
今回の気になる数字は「736兆円」。とても大きな金額ですね。何の数字を表しているのか、詳しくみてみましょう。
今回の数字は736兆円。日本銀行の今年3月末時点の総資産(所有する財産の合計)です。
10年連続で過去最大を更新(こうしん)し、10年前の5倍以上に拡大しました。毎日100万円使っても200万年以上かかる金額で、日本が1年間に生み出す付加価値(もうけ)の合計(国内総生産=GDP)の約540兆円も上回ります。
日銀は中央銀行として通貨の発行などさまざまな役割を担っており、金融政策(きんゆうせいさく)を通じて物価を安定させることを目的の一つに掲(かか)げています。日本経済が1990年代初めのバブル崩壊(ほうかい)後、長くデフレ(物価の持続的な下落)に苦しむ中、金融政策の大転換(だいてんかん)によって物価の底上げを図(はか)ったのが、2013年3月に就任した日銀の黒田東彦(くろだはるひこ)総裁です。
日銀は物価(インフレ率)の目標を2%に据(す)え、民間の銀行が持つ国債(こくさい)(国が発行する債券(さいけん))を大量に買い入れて経済にお金を供給する政策を実行しました。それでも、物価はなかなか上がらず、日銀が購入(こうにゅう)し続けた国債の残高は今年3月末で526兆円。発行された国債の約半分を占(し)め、日銀の総資産を膨張(ぼうちょう)させました。
そして今、原油高や円安などでインフレ率は2%を超(こ)えました。金融政策を維持(いじ)すれば物価がさらに上昇(じょうしょう)しかねませんが、政策を転換(てんかん)すれば金利が上昇して景気を冷やしたり、国債の利払(りばら)い負担が増えたりする可能性もあります。
黒田総裁の任期は来年4月までで、日銀が政策転換するかどうかが経済関係者の関心事となっています。
(毎日小学生新聞 22年8月13日掲載より)
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