【ニュースがわかる2025年1月号】楽しくあけよう パッケージ

八丈島伝統の味「くさや」はこうして作られる

ニュースがわかる7月号の巻頭特集「日本の島」では、八丈島に暮らす人たちに、島のことや、島のために力を入れていることを教えてもらいました。誌面で紹介しきれなかった、伝統の味「くさや」の作り方とは?(「Newsがわかる2023年7月号」より)

長田商店の長田隆弘さん「くさやのひみつ」

くさやの作り方を説明する長田さん。これまで多くの小中学生に話してきた

長田さんーー東京都市部のスーパーでトビウオを見たことはありますか? おなかを見ると赤黒い線があると思います。これは、東京に行く間に心臓から血が出るから。線をみると、私たちは水揚げからどれくらい時間がたったのかわかります。八丈のトビウオはおなかが真っ白。水揚げ後、すぐに洗っておなかを開き、内蔵をとっちゃうからです。

 トビウオは背中から、傷みやすいムロアジはおなかから開きます。エラと内蔵をとったら、水につけて体の血を抜きます。生臭さをとり、保存性を高めるためです。そうして、くさやの液に夏は8時間、それ以外の季節は半日ほどつけます。

 八丈島のくさやは、この後「水にひたす」のが特徴の一つ。水にひたして塩抜きすることで、塩分もにおいもおさえられ食べやすくなります。その後、25度に保った室内の乾燥機で1~2日間、乾かします。全行程は4日間。これでくさやが完成します。

くさやの製造場所は店の奥にある

 くさや液はもとは塩水。明治時代に新島からもらい、約150年間、使い続けています。くさや液1滴(1ミリリットル)におよそ7億の菌がいて、つけた魚を菌が食べ、脂肪分やたんぱく質をうまみ成分に変えています。

 くさや液から魚を引き上げると、たくさんの菌が魚にくっついていくので、くさや液の中の菌が減ってしまいます。菌が少ないまま続けてくさや液を使うと、おいしいくさやができません。だから、作ったらくさや液をいったん休ませ、再び菌が増えてから製造します。

町中心部から長田商店に向かう道。道の先に海が見える