推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

日本の漁獲量、減っているの?【ニュース知りたいんジャー】

日本の漁獲量が大幅に減少しています。1984年に1282万トンあった漁業・養殖業の生産量は、この40年間でどんどん減り続け、2023年に372万4300トンと統計が始まって以降で最低になりました。このままだと、いずれ国産の魚が食べられなくなるのでしょうか。減少している背景を探り、持続可能な漁業について考えます。【金将来】


 ◇なぜ減っているの?


 減少の原因は複数ありますが、まず挙げられるのは、およそ40年前に国際的なルールで定められた「200海里水域制限」です。
 日本の漁船は1970年代ごろまで、はるか遠くの外国の海で漁をする「遠洋漁業」を盛んに行っていました。しかし、82年に「国連海洋法条約」という国際ルールが採択されて、それぞれの国の岸から200カイリ(約370キロメートル)内に外国の船が勝手に入って漁をしてはいけないことになりました。その後、日本の漁獲量は徐々に減り始めました。

丸々と太った寒ブリを選別する府漁協職員たち 京都・舞鶴


 国の役所・水産庁によると、日本の漁業は戦後、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと漁場を拡大することで発展しました。ピーク時の遠洋漁業の漁業生産量は、漁船漁業全体の約4割を占めていましたが、90年ごろにその量は約1割まで低下しました。条約の決まりによって、打撃を受けたわけです。


 ◇地球温暖化も影響している?

 近年、最も深刻な問題となっているのは、気候変動による海水温の上昇や、海洋汚染による海洋環境の異変です。特に、温暖化による海水温の上昇は大きく、気象庁によると、日本近海の海面水温は、この100年で1.28度高くなりました。特に、ここ4~5年の海面水温の上昇は異常なレベルで、日本近海の温暖化は世界の海よりも早く進行しているという分析もあります。
 魚は種によって適した水温の海域に生息します。このため、海水温の変化によって、魚たちは生息域を変えているとみられます。
 例えば、サワラは暖かい海を好み、もともと東シナ海や瀬戸内海に多く生息していました。ですが、海水温の上昇で日本海などでの生息が確認されるようになりました。このほか、サンマは主に北太平洋に生息し、秋になると北海道の東にある千島列島から日本列島の東岸へやって来るのが主流でした。しかし現在は、より沖合を来遊するようになっています。
 これらの魚が生息域を変えることで、日本近海でとれていた魚がとれなくなったり、特定の魚の漁獲量が減少したりしています。

サンマ 岸壁に横付けされた棒受け網漁船から水揚げされる 根室 /北海道


 ◇漁獲量が増えている魚もあるの?


 日本の全体的な漁獲量は減少していますが、地域によっては、これまでとれなかった魚がとれるなどして、漁獲量が増加している魚の種類もあります。
 特に、北海道のブリの漁獲量は2010年ごろから増え、20、21年は全国トップになるほどに増加しました。宮城県のサバやタチウオ、福島県のトラフグなどは、10年前と比べて大幅に漁獲量が増加しています。これらの現象は、地域の名産物であった魚がそうでなくなったり、反対にこれまでとれなかった魚がとれることで、その地域の水産物になったりと、我々消費者にも大きな影響を与えています。現場の漁師からは「海の変化に困惑している」との声が聞かれます。

水揚げされる天然トラフグ 相馬・松川浦漁港 /福島


 ◇このまま減り続けたら、国産の魚を食べられなくなるの?


 たしかに、海洋環境の異変が進行し続ければ、漁獲量の減少は今後も進むことが予想されます。一方、国や自治体、漁業協同組合などは現状の漁獲量の減少に歯止めをかけようと、魚介類の多様性や生産力を維持できる「持続可能な漁業」に取り組んでいます。例えば、青森県五所川原市は、大和しじみの操業期間や漁獲量などの制限を持続的に行い、安定的な生産を実現しています。
 また、北海道のホタテは、多くの水産物が生産量を減らしている中、長年、養殖業も合わせて年間約30万~40万トンの生産を維持し続けています。このため、環境への配慮と水産資源の持続可能性を実現した漁業に与えられる国際的なエコラベル認証を2013年に取得しています。


 ◇私たちにできることはあるの?


 海にやさしい環境への配慮を、一人一人が心がけることが大切です。海洋ごみや海岸に不法投棄されたごみなどによる海洋汚染は、魚の生態系にも大きな影響を及ぼすとされています。
 エコバッグやマイボトルを使用してレジ袋やペットボトルの使用を控えたり、ビーチクリーンや河原の清掃活動に参加したりするなど、海洋環境に貢献できることは多くあります。小さな取り組みが海の資源保全につながり、魚を食べられる日常を守ることにつながります。(2025年01月22日毎日小学生新聞より)