科学コミュニケーターの本田隆行さんと相棒のボットンが、日常のあちこちに潜む科学を探っていきます。今回は医療や宇宙でも大活躍!「面ファスナー」をナゾ解き!(「Newsがわかる2025年3月号」より)

じゃあ、散歩しながら話そうか。まずは、なんでつけたりはがしたりできるのかだよね。面ファスナー、触って何か気づくことってない?
う~ん……あ、片方ずつなんだか手触りが違うかも
お、そうそう。実はそれぞれの面が違うつくりをしてて、だから手触りが違うんだよ
つくりが違うって、どういうこと?
ちょっとザラザラしてる方は、小さなフックがたくさん集まったようなつくりをしてるんだ。もう一方のフカフカしてる方は、小さな輪っかがたくさん集まっているよ
そうなの? 小さすぎてはっきりとは見えないけど……あとで虫めがねで見てみよっと
それぞれをグッと押しつけると、互いが引っかかることでくっつくんだ。で、力を入れてはがすと、フックが伸びることではがれるようになってるんだよ
なるほど~! 小さな引っかかりをたくさんつくることで、簡単にくっつけたりはがしたりしてたんだね、すごいアイデア
だよねえ。ちなみに面ファスナーが正式な名前なんだけど、固有の商品名である「マジックテープ」とか「ベルクロ」って呼ぶことの方が多いかもしれないね
あ~! それ聞いたことある! そっか、油性マーカー(固有の商品名:マジックペン)や、ツナの缶詰(固有の商品名:シーチキン)と同じような感じなのか……

マジックテープに代表される面ファスナーのそれぞれの面をよく見てみると、小さなフックと輪っかの二つの形がある。フックが輪っかに引っかかることで“くっつく”。このフックと輪っかの並びや形によって、いろいろな面ファスナーがあるのだ
ところで、このすごいアイデアって、どうやって思いついたものだと思う?
それ気になる! え~、夢で見たとか、神様のお告げとか?
いやいや、もっと現実的なところにヒントがあったんだ。実はね、きっかけは散歩中に見つけたあるものだったんだよ
散歩中!? 今のぼくらと同じじゃないの!
そうそう。開発したスイスの人がアルプスの山を愛犬と歩いていると、自分の服や犬の体にたくさんゴボウの実がくっついてたんだって。すぐくっつくのに手ですぐ取れる理由が気になって顕微鏡で調べると、ゴボウの実の先がフック型だったってわけさ
えええ、野生の植物がヒントだったんだ! ちゃんと調べてみるっていうのがすごいね
だよね。しかも、ちゃんと特許を取って、製品にしてるっていうのもすごいよね。今では医療器具や宇宙ステーションの中でも使われていたりするし、まだまだ活用の可能性がありそうだよね
面ファスナーって、なんだかすごいんだねえ
面ファスナーみたいに、植物や動物の持つ仕組みを活用した技術開発のことを「バイオミメティクス」っていうんだ。身の回りには他にも自然をヒントにした技術ってたくさんあるんだよ
うーむ! こりゃぼくも、散歩中になにか面白い“タネ”を拾って帰りたくなってきたぞ……!!

水田の上を飛ぶカワセミ。水の抵抗をもっとも小さくする形状だというカワセミのくちばしを模して、新幹線500系の先端はデザインされた=神奈川県綾瀬市で2022年8月
イラスト:こばやし あさみ
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