科学コミュニケーターの本田隆行さんと相棒のボットンが、日常のあちこちに潜む科学を探っていきます。今回は実はこわい!? 富士山のことをナゾ解き!(「Newsがわかる2023年7月号」より)

富士山って、とても大きな火山なんだよ。これまで何度も繰り返し噴火をすることで、今の高さまで成長したんだ
えー! 火山ってことは火を噴くってこと!?
そう。噴き出した溶岩や火山灰が重なってできた「成層火山」ってタイプなんだよ。奈良時代から江戸時代にかけて、何度も噴火してきた様子は、いろんな古文書や絵に残されているんだ
でも、富士山が噴火したなんてニュース、ボクは聞いたことないけどなあ……
富士山が最後に大噴火をしたのは1707年。それから300年以上、噴火してはいないからね
ということは、もう噴火しないんじゃないの?
でもね、十数年前までは山頂や山腹付近からガスを噴出する「噴気活動」がみられていたらしいし、まだ火山性の地震は発生してるからね。「噴火することをやめた」わけではないみたい
そうなんだ……
もし、300年前と同じような噴火をした場合、まずはモクモクと空へ上がり、やがて降ってくるのが火山灰だ。西からの風に乗って関東地方に広く降り注いで数〜数十センチは積もるようだね

数センチか……それならなんとかなりそうかも
それが、そうもいかないんだ。火山灰は顕微鏡で見るとトゲトゲした形をしてて、吸い込むのは体に悪い。エンジンに入り込むと故障するから飛行機は飛べなくなるし、自動車もエンジン故障などにつながる。発電所や浄水場もダメにしてしまう可能性が高い。数センチ積もるだけで、生活を支えるシステムはあっという間に使えなくなるかもしれないんだ
えー! 大変じゃないの!
長い間噴火してないということは、その分地下にはエネルギーがたまってるはず。これまでの研究や調査でわかったことを反映させて2021年には「富士山ハザードマップ」が、そして2023年3月には「富士山火山避難基本計画」が作り直されたんだ

観光で行く人も見ておいた方がいいよね、きっと
そう。もちろん住民だけじゃなくて観光客も避難計画の対象になっているんだ。富士山に関わるんだったら、ハザードマップはちゃんと確認しとかないとね
もし噴火したら……って考えると、火山が近くにあるのは怖いなあ
日本は常に監視している火山が50もある、世界の中でも火山の多い国なんだ。でも、火山があるからこそ、温泉やおいしい地下水が湧き出るし、美しい自然の風景も作り出されるんだよね
そうかあ……噴火は怖いけど、火山があるからこその豊かな恵みがあるとも言えるのか……どうしたら火山とうまく付き合いながら生活できるんだろう
イラスト:こばやし あさみ
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