【ニュースがわかる2024年11月号】巻頭特集は世界が注目! アメリカ大統領選

身の回りの疑問から英語で話す【変わる英語教育】

この上の写真は何をしているところでしょう?

私が神田外語学院で行っている英語の授業はいつもこのように写真を「観察」することから始まります。

もう少し写真を拡大してみましょう。

いかがでしょう。何が見えますか?ただの道路のようですが、よく見ると飲みかけのジュースの缶が・・・。なぜここにこのようなジュースがあるんでしょう?

実のところ、この写真は学生が毎日通る通学路です。
ですから、学生はこの場所の近くに何があるのか分かっています。それは自動販売機だったり、お店だったり。
普段何気なく通る道であっても、ちょっと注意を払うと異なる世界が見えてきますね。

私の英語の授業では、生徒は毎回SDGs(注)に関係する写真を用意し、
What’s going on in this picture? (写真の中に何が見えますか?)
という質問をクラスに投げかけ、疑問を共有することから始まります。

◆英語を話すのはなぜ難しいのか?

あまり話題となっていませんが、ここ数年で多くの皆さんが学校で学ぶ内容を取り扱う学習指導要領が大きく変わったのをご存じでしょうか。

小学校高学年では英語が教科として扱われるようになった関係で、高校までで学ばなければならない単語数がグッと増えました。

文科省HPから髙橋作成
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/044/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/07/09/1405957_003.pdf

また、特に注目すべきこととしては、小学校の英語教育で「話す」が「やり取り」と「発表」との2領域に分類され、より一層「話す英語」、つまり英語の運用能力に注目が集まるようになったのです。

ところがあるデータによると、多くの方が「英語を話すのが難しい」と感じているようです。なぜ英語を話すのを難しいと感じるのでしょうか。ここでは詳しい第二外国語習得の理論についてお話しすることはしませんが、英語が話すのが苦手、と感じる理由には「情動フィルター」が働いているため、といわれています。

「情動フィルター」とは、簡単に言えば「恥ずかしい」という思いです。
みんなの前で英語を話して、

「間違ったら嫌だな」
「発音が変だったら嫌だな」
「おかしなことを言って笑われたら嫌だな」

このような「嫌だなー」という思いが英語を話そうとする意欲を下げているのです。

◆どうすれば英語を話せるようになるのか

では、一体どうすれば「嫌だなー」という思いを少なくすることが出来るのでしょうか。それは、

自分についてではなく、他の「モノ」について話す

つまり、自分自身ではなく、写真やレゴの作品など、自分の興味関心のある対象について話してみることが大切です。

さらに、英語力を伸ばすためにはインプットとアウトプットが大切と言われています。当たり前のようですが、ちょっと詳しく説明すると、次の2点が重要です。

<インプット>自分の理解できる言葉をたくさん聞く・読む

<アウトプット>フィードバックをもらいながらたくさん話す・書く

誰でもいきなり英語が出来るようになるわけではありません。赤ちゃんだってそうです。私たち人間が言葉を習得するためには、非常に多くの言葉のシャワーを浴びなければなりません。また、ただ浴びるだけでなく「80%ぐらい理解できる」内容の言葉を浴びる必要があるそうです。ですから、まず最初に自分の興味関心のある本やニュースを多く読んだり、聴いたりするのが良いですね。そして今度は使ってみましょう。覚えた単語やフレーズを使って話したり、書いたりしてみましょう。すぐにコメントやフィードバックをもらえたりしたら最高です。

ニュースを使って英語を話しながら、世界を広げよう

私が冒頭に紹介した写真は、SDGsのゴミ問題に関するものです。いきなり、「ゴミ問題について考えましょう!」とするより、身近な疑問から始めた方が、ぐっと理解が深まりますよね。

学生は自分の興味関心のある写真を選び、その写真についての記事を読んできます。まずは、自分が興味を持った問題について考え、理解を深め、それから質問を投げかけます。

SDGsなどのニュースは、一般的に遠く離れた場所の問題であることが多く、具体的なイメージが湧かないことがよくあります。でも、どうでしょう。こうやって写真を見ながら「何があるのかな」「どうしてかな」と考えることで写真を通じて世界への窓が開かれていると思いませんか。

What’s going on in this picture?

写真の中に何が見えますか?

今、みなさんは、どんなニュースの写真を見ていますか?

注)SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。

話を聞いたひと

髙橋一也(たかはし・かずや)

神田外語大学客員講師。慶應義塾大学・同大学院を卒業後、米ジョージア大学教育大学院にて授業デザイン法を学び、全米優等生協会に選出される。帰国後、聖学院中高にて英語教諭として勤務。2018年はオランダ・ユトレヒト大学大学院で認知心理学を研究。2016年度から2019年まで工学院中・高の教頭を務める。
教育理論の知見に基づき、PBL(Project-Based Learning、問題解決学習)やアクティブ・ラーニングなど新たな授業スタイルを実践し続け、2016年には日本人として初めてグロ−バルティーチャー賞の最終候補に選出される。