領土って何だろう【月刊Newsがわかる6月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【芝浦工業大学附属中学校】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は芝浦工業大学附属中学校を紹介します。

「新幹線の生みの親」の精神を今も継承! 社会を変える理工系人材の育成を目指す

<注目ポイント>
①「新幹線の生みの親」十河信二の志を継ぐ理工系教育。
②JAL・東京メトロなど企業連携で実社会の課題に挑む。
③豊洲から長野、世界へ探究フィールドを段階的に拡大。

十河信二の志と建学の精神

 地域を歩き、企業の現場に入り、社会の課題を自分の手で形にしていく――芝浦工業大学附属中学校の探究学習には、「机の上で終わらせない学び」という一貫した思想がある。豊洲でのフィールドワーク、水陸両用バスで街の成り立ちを捉える地域探究、JALや東京メトロと連携して企業の課題に挑むプログラム。いずれも現実社会と正面から向き合うプログラムだ。

 こうした実践重視の姿勢は、最近になって生まれたものではない。原点は1922年に創設された東京鐵道中学校に遡る。創設を主導したのは、のちに「新幹線の生みの親」と称される十河信二。鉄道省の経理課長だった十河は、現場で働く若い職員にこそ幅広い教養と社会的視野が、日本の発展のためには必要だと考え、鉄道大臣に学校設立を進言した。技術を知り、社会に働きかける人材を育てようとしたのだ。この精神は、学校の根幹に今も息づいている。

 同校が掲げるのは「世界で活躍し、世界を変える理工系人材の育成」。その理念を具現化したのが、2021年にスタートした独自プログラム「SHIB AUR A 探究」だ。PBL(問題解決型学習)を軸にした「IT(Information Technology)」「GC(Global Communication)」「総合探究」の3本柱で構成され、共通テーマは「理工系の知識で社会課題を解決する」。

 入学直後のガイダンスでは、校長自ら十河信二の足跡を語り、高入生は熱海の丹那トンネルを訪れて難工事の現場を体感する。先人への敬意と技術への姿勢を学ぶことから、この学校の学習は始まるのだ。

企業と挑む実社会の課題解決

 「IT」は、中1でプログラミングやドローン制御、3DCAD、動画編集といったICTスキルの基礎を幅広く体験するところからスタートする。ただし、同校の目標は単なるスキル習得にとどまらない。合言葉は「誰かのための“新しい”を創る」。その「誰か」を実在の企業に設定している点が、この授業の核になる。

 中1ではJAL(日本航空)や日本科学未来館と連携した授業を実施している。JALでは全4回の授業を展開。初回にJAL社員から、「予備機を減らすには」「定時運行の改善策」「機内の飲食物在庫を効率的に把握する方法」といった各部署のリアルな課題が提示される。JALの格納庫見学で航空業界の現実に触れた後、生徒たちは解決策をまとめ、JAL社員の前でプレゼンに臨む。あるグループは、機内食にバーコードを付けてiPadで残数をリアルタイム管理するシステムを提案。課題整理からメリット・デメリット分析まで体系的に組み立てた思考プロセスが評価された。理科主任の小川賢一郎教諭は「中学生ならではの斬新な発想を企業側も期待している。大人の常識に捉われない発想が企業にとっても大きな刺激になっている」と語る。

 日本科学未来館との連携では「未来館に来たくなるCM動画」を1人1分で制作し、最優秀作品は公式SNSに掲載される。館全体を紹介するのではなく、科学コミュニケーターの魅力にピンポイントで焦点を当てた作品が生まれるなど、中1とは思えない着眼点が見られた。

 中2になると舞台は東京メトロへ。各部署の企業課題が生データとともに提示され、コスト試算や人件費まで踏み込んだ現実的な解決策を求められる。過去には、駅ホームに風鈴を設置して電車の風圧で体感温度を下げ、冷房の電力消費を抑える案が、企画会議の最終選考まで残ったこともある。斎藤貢市教頭は「東京メトロの方には生データの提供だけでなく、企業努力の実態まで説明してもらっている。知識やスキルが十分でなくとも、生徒は課題解決に向けて自走するようになる」と語る。

航空業界が抱える問題を実際に体感するJAL 羽田格納庫見学の様子

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