未就学の子供から企業の社長まで、幅広い世代に「話し方」について教えている、一般社団法人日本話し方協会理事長の渡邉由規さんに、「話し方」に関するお悩みやご家庭でできる「話し方」のトレーニング法等をご紹介いただきます。
今回は「人前で話すこと」が苦手という方にどうしたら克服できるのか、教えていただきました。
これからの季節は、「運動会」「文化祭」など発表の場、子供たちが自己表現をする行事、イベントが目白押し。大勢の前で、表現をすることが得意な子もいれば、苦手な子も少なくありません。「人前で話すことが苦手」という悩みは、話し方教室に相談しにこられる方も多いテーマです。
先日も、小学校6年生の男の子がお母さんと一緒に話し方教室へやってきました。理由は、モジモジせずに堂々と人前で話せるようになるためです。
その子は、学校の成績も良く、野球部でもキャプテンとして後輩の面倒もよく見るリーダー的な存在です。ただお母さんが心配しているのは、このまま中学校へ進学後、みんなの前で堂々と話せることができるか・・・・・・今のうちに自信をつけてほしいということからでした。

イメージ図
相談にこられたお母さんはアメリカ育ち。人前で話すことは幼い頃からの教育を受ける機会もあり、身につけることができました。しかし日本では、子供たちが「人前で話す」ことを学校で学ぶことはおろか、日常的に発表したり、練習をする場面がありません。このままわが子が中学校へ進学後、”みんなの前で堂々と話すことができるのか”と、焦りを感じ、今回、話す表現力と自信をつけさせたい一心で、私の「話し方教室」へきてくれました。
「人前で話すのが苦手」を克服することは、これから子供たちが成長し、広い世界へと羽ばたいた後も生き抜いてくための大事な武器です。
日本の文部科学省でも、小学校では2020年度から新たに「表現力」が加わり、改定後は日本の授業でも「表現力」を磨くためのプログラムは、全国の小・中学校でも様々な方法で実施されていると思いますが、まだ実施されて間もないこともあり、学校任せではいつまでたっても「人前で話すのが苦手」を克服するのは難しいと思います。
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◆なぜ人前で話すのが苦手なのか?
なぜ人前で話すのが「苦手」という意識が働くのでしょうか?
「失敗したらどうしよう」
「失敗しないようにしなければならない」
「過去に上手くできなかったマイナスの経験」
「人の目が怖い」
・・・・・・ というプレッシャーが起きます。
また、そういった不安や緊張そのものが「自分は成功する筈がない」「自分の話すことを受け入れてもらえる筈がない」という「自己否定」 の影響によって、「苦手意識」が増殖していきます。
これは話す内容や環境の難易度が自分にとって高ければ高いほど、よく起きることであり、ほとんどの人は経験があることです。
それでは、どうしたら、苦手意識を克服し、上達するのでしょうか。
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◆体得するまでの3つのステップ
勉強もスポーツもですが、「話力」を鍛えるのも、練習あるのみです。テクニックの習得から体得までは3つのステップ時期が大切といわれています。
1つ目は、情報収集したものをひとまず報告する時期
2つ目は、とにかく思ったことを伝えてみる時期
3つ目は、あらゆるテーマにチャレンジする時期
話し方は場数チャレンジしながら、さきほどのとおり、段階的な時期を経て成長していきます。
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◆まずは型にあてはめてみることからはじめよう
「話力」を鍛えるためには「練習あるのみ!」とお伝えしましたが、まず何からはじめていいのか、わからない方も少なくないと思います。そこで、おすすめするのが、型に当てはめてはなしてみることです。
日常会話の何気ない「おしゃべり」の延長線上で話しても、内容がうまく通じなかったという経験をされた方もいると思います。思いついたことをそのまま単語化するのでなく、話す組み立て、つまり型を知って、その型に当てはめて話してみることからはじめてみましょう。
下の一番簡単な文章構成の組み立て方としてテンプレートを紹介します。

文書構成の型「SDS法」
上の図のように頭の中を整理し、筋道を立てて順番通りに話してみることからはじめてみましょう。
人前で話すときには「何を伝える」かだけでなく、「どのように伝えるか」と頭の中を整理する習慣を身につけることで、人前で話すことへの苦手意識から、解放されていきます。
さきほどご紹介した文章構成の組み方を参考に、日常の親子の会話から練習してみましょう。
「話し方に関する悩み」など渡邉さんに聞きたいことはコチラ
教えてくれた人

渡邉 由規(わたなべ・ゆき)
一般社団法人日本話し方協会理事長。「渡邉由規 話し方教室」代表講師。
地元の大学を卒業後、大手企業の秘書として働き、その後子育てと並行しながら約20年間テレビ・ラジオのリポーター、MC など経験をもとに、社会で活躍するビジネススキル(話す力、伝える力、聞く力、質問する力、自己表現力)のカリキュラムを開発。
これまで小学校受験を目指す未就学の子供たちから企業の社長など、国内外の企業研修、人材育成など約3万人以上を指導。個々の能力に合わせた育成指導は定評がある。著書『脱!あがり症 〜あがり症受講生1000人を救った“わたゆき式話し型”を身につけよう〜 』(同文舘出版)『話力集中講義1日10分』(毎日新聞出版)。
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著者:日本話し方協会 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円
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第2章 今すぐ習得すべきコミュニケーション術
第3章 一目置かれる人になる際立つ話力
第4章 自己表現力は、あなたの人生を豊かにする
第5章 伝え方の極意
第6章 とっておきの声は、最強のスキル
第7章 論理的な思考ができるスピーチライティング
第8章 究極の技で、話力の専門家へ
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