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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

世界から核兵器がなくなる日はくるのか?

核兵器を持つアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5大国が1月3日、核戦争の防止を確認する共同声明(意見)を発表しました。人類を脅かし続ける核兵器をなくすため、今年は核兵器禁止条約の締約国会議と核拡散防止条約(NPT)の再検討会議があります。各国が、共通の目標である「核兵器廃絶」に向けてどこまで歩み寄れるか、注目されます。(ニュースがわかる2022年3月号より)

「戦ってはならない」核保有5大国 NPT再検討会議はコロナ禍で延期

「核戦争に勝者はない。決して戦ってはならない」。5大国の共同声明は、一度に大勢の人を殺したり傷つけたりする核兵器を戦争で使えば、人類が滅んでしまうことをお互いにわかっていると強調したものです。5大国は2021年12月から、今年1月4日に始まる予定だったNPT再検討会議に向けて準備し、共同声明は会議に合わせて発表する予定でした。しかし、再検討会議は新型コロナウイルスの感染再拡大のために2021年末、延期が決まりました。5年に1度、世界の核兵器廃絶に向けた現状と取り組みを話し合う会議はもともと2020年春の予定でしたが、4度目の延期で今年8月に開かれる見込みです。

  核拡散防止条約(NPT)  核兵器を持つ国(核保有国)をアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5大国に限り、他の国が新たに持つことを禁止した条約。1970年の発効*当時、すでに持っていた5大国には核兵器を減らすことを義務づけている。日本を含む191カ国・地域が加盟している。発効後に核兵器を持ったインド、パキスタン、イスラエルは加盟せず、北朝鮮は脱退を宣言した。
  核兵器禁止条約  2017年7月、122カ国・地域の賛成多数で採択され、批准(※)が50カ国・地域に達した90日後の2021年1月に発効した。核兵器を作ったり使ったりすることだけでなく、核兵器で相手を脅かしたりすることまでを禁じている。アメリカやロシア、インドなど核兵器を持っている国と、日本、カナダ、ドイツなどは参加していない。

※「批准」……最終的な同意、確認の手続き

核兵器禁止条約 核保有国などは反対

 核兵器禁止条約の初めての締約国会議ではオーストリアや南アフリカなど、条約を批准した国々を中心に核廃絶の具体的な方法を話し合います。今年3月にオーストリアのウィーンで開かれる予定です。この条約は、核兵器を持つことが相手に攻撃を思いとどまらせ、戦争を防ぐ力になるとする「核抑止力」という考え方がおおもとにある、核兵器による脅しも禁じた画期的なものです。しかし現在、核保有国だけでなく、それらの国の威力を自分の国の安全を守るために利用する「核の傘」の下にある日本やドイツなども条約に反対し、署名していません。

イラン核合意 話し合いは難航

核保有5大国とドイツの計6カ国が、2015年にイランと結んだ「イラン核合意」の行方も注目です。イランは核兵器開発をせず、6カ国は経済制裁をやめる約束でしたが、イランを敵とみるアメリカのトランプ前大統領は2018年に合意から抜け、制裁を強めました。2021年にトランプさんに代わって大統領になったバイデンさんは、合意に戻ろうとしていますが、イランでは2021年8月、アメリカに対して強い態度に出るライシ大統領が就任し、話し合いは進んでいません。

世界の終末時計 核兵器削減は待ったなし

核戦争などで世界が終わり、人類が滅ぶまでの残り時間を示す「終末時計」というこわい時計があります。アメリカの科学誌「原子力科学者会報」が1947年から発表しています。2020年には過去最悪の「あと100秒」を示し、今年も新しい核軍拡競争が始まる可能性があるなどとして、針はそのままでした。核兵器の削減は待ったなしの状況で、残された時間はわずかです。

「人類滅亡まで、あと100秒」

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