17日は、関西を中心に大きな被害のあった阪神大震災が発生した日です。ただ、地震から30年が過ぎたため、知らない世代が増え、記憶を受け継いでいくことが難しくなっています。そんな中でも、阪神大震災で学んだことを風化させず、将来起きる恐れのある大規模災害に備えなければいけません。【長尾真希子】
◇どんな地震だったの?
1995年1月17日午前5時46分、兵庫県・淡路島北部を震源とする地震が起きました。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・3の大きな地震で、同県神戸市などで震度7を記録しました。都市直下で起きる地震は戦後初めてでした。兵庫県や大阪府を中心に6434人が亡くなりました。また、高速道路の太い橋脚が折れて倒れたり、ビルが横倒しになったりしました。交通網や電気・水道などのライフラインも寸断されました。

多くの建物が倒れて大きな被害が出たのも、この地震の特徴です。これは、耐震性についての新しい建築基準(81年)ができるよりも前に建てられた揺れに弱い建物が、多く残っていたのが主な原因です。壊れた住宅は24万9180棟に上ります。

地震のあとの避難生活による健康状態の悪化などが原因で亡くなる「震災関連死」という言葉も生まれました。また、自宅を失った人たちが避難所から仮設住宅などを転々とせざるをえず、ストレスを抱える被災者の「心のケア」が問題化しました。
◇ボランティアが活躍したんだよね
阪神大震災では、1年間で全国から延べ138万人のボランティアが駆けつけ、救援物資を運んだり、炊き出しをしたり、避難所の運営をしたりするなどの活動をしました。ボランティア経験のない人も含め、一般の人がこうした活動に携わるきっかけが阪神大震災だったといわれます。このため1995年は「ボランティア元年」とも呼ばれています。
被災者を支援するボランティア団体やNPO法人が数多く生まれました。98年に特定非営利活動促進法(NPO法)が作られ、民間の非営利団体が簡単な手続きで法人格を取得することができるようになりました。これにより、お金や土地に関するものなど、さまざまな契約などをしやすくなる利点があります。

阪神大震災 炊き出しをするボランティア
◇風化が進んでいるの?
兵庫県内では、市民団体などが予定する追悼行事の数が10年前の半数近くに減っています。神戸市の市民グループ「市民による追悼行事を考える会」の集計によると、市民団体や企業、寺院などの関連行事は58件と見込まれています。10年前は110件でした。会の分析によると、高齢化と、追悼行事を行うための資金難が大きく影響しているといいます。
灯籠を並べて文字を作ることで全国的に知られる神戸市の公園・東遊園地で開かれる「1・17のつどい」は、今年、開催規模を縮小する予定です。安全対策のためのスペースを確保する必要があるためだそうです。灯籠でかたどる文字は「よりそう」と決まりました。

神戸市では震災後に生まれた人が全体の4分の1になり、震災を知らない世代が増えました。高齢化も進んでいます。しかし、次の災害で命を落とす人がいないように、震災の記憶を風化させないためにと、防災・減災へつなげる取り組みを発信し続けています。
◇震災を学べる施設はあるの?
震災の学習施設「人と防災未来センター」(神戸市中央区)と、地震の震源となり地表に露出した活断層「野島断層」を展示する北淡震災記念公園(兵庫県淡路市)の「野島断層保存館」がオススメです。
2002年4月に開館した「人と防災未来センター」では、地震発生の瞬間を再現した映像や、震災直後の街並みの原寸大ジオラマなどで疑似体験ができます。また、近い将来起きると心配されている南海トラフ地震や首都直下地震が発生した場合の被害想定などが展示され、防災や減災についての知識を身に付けることもできます。

一方、「野島断層保存館」には、活断層の一部が約140㍍の長さで保存されています。「野島断層」は国の天然記念物となりました。敷地内には、戦争中の神戸大空襲(1945年3月17日)と阪神大震災の両方に耐え、復興のシンボルとなった防火壁「神戸の壁」も建っています。この壁は神戸市長田区の市場にあったものです。震災の記憶を伝える遺構として保存するため、今の場所へ移設されました。地震のすさまじさと脅威を感じることで、備える大切さを学ぶことができます。
◇地震に備えるには?
地震の規模が大きくなるほど、自治体や消防などによる助けは遅れるので、まずは「自助」と「共助」が大事です。
一人一人や家族での対応は「自助」、地域や身近な人が助け合うことは「共助」といいます。これに対し、国や自治体などの支援は「公助」と呼びます。阪神大震災によるけが人は、7割近くが自助、約3割が共助で救出されたという調査結果があります。
その後発生した東日本大震災(2011年)や能登半島地震(24年)でも分かったのは、大規模な災害であればあるほど、救助や支援物資の到着が遅れる可能性が高いということです。このため国は、大規模な地震に備えて、最低3日分、できれば1週間分の飲料水や食料、カセットコンロなどを用意しておいてほしいと呼びかけています。
共助については、日ごろから近所の人と関係を築くことが大事です。助け合いの意識を持って、話し合っておけば心強いでしょう。(2025年01月15日毎日小学生新聞より)