Q タブレット端末で指紋を読み取る仕組みはどうなっているのですか(神奈川県鎌倉市、小5)
電子の量はかり、特徴を読み取る
A スマートフォンやタブレットには、持ち主以外に大切な情報を見られないようにロックする機能があります。ロックを解除するには、持ち主が決めた暗証番号を入れたり、指紋や黒目の模様などの体の特徴で、本人だと確認したりする方法があります。指紋を使った方法を指紋認証と呼んでいます。指紋は誰もが持っていますが、同じ遺伝子を持つ一卵性の双子ですら異なっていて、同じ模様の人はいず、また生涯変わることがないため、本人を特定するのに適しています。
富士通研究所で指紋などを使った生体認証の研究に取り組んでいる新崎卓さんに聞きました。
指紋には、いくつかの特徴的な模様があります。指紋の線の行き止まり(端点)、アルファベットの「Y」のような分岐点、三つの線が集まったデルタ(三角州)です【図1】。この特徴がある場所と数をセンサーで感知して、あらかじめ登録された指紋と一致するかを判断します。

指紋の模様を感知するセンサーは、10ミリメートル四方の大きさに、50マイクロメートル(1000分の50ミリメートル)の小さな電極が方眼紙のマス目のように一つずつ埋め込まれたものです。センサーに指が置かれるとまず、指がきちんと触っているか、その面積をはかります。面積が十分にあると判断されると、電極の電子(原子の周りをぐるぐる回っている物質)の量をはかります。
指が近づけば近づくほど多くの電子が電極にたまります。指紋の盛り上がって線を作っている部分(隆線)は電極に近いので、それ以外の部分に比べて電子はたまりやすくなります。反対に、へこんだところは電極との間に空気の層があり、盛り上がった部分に比べてたまる電子は少なくなります。【図2】

電極の下の回路でたまった電子の量をはかり、白黒の指紋の画像に変換します。電子がたくさんある場所ほど黒く、少ないほど白く表示するように設定されています。画像から図1の指紋の特徴点をいくつか抽出し、場所や、線の方向などが事前に登録した指紋と一致しているかを判断しています。最近では、指にある汗が出る穴の位置なども検出するようにして、より精度を高める研究も進んでいるそうです。
指紋認証は、海外の難民キャンプで国連難民高等弁務官事務所も使っているそうです。国を追われて逃げてきた多くの難民の人は、身分証を持っていません。食料の配給や予防接種を受けるときに、登録された名前などの情報と人をひもづける時に、指紋認証を使っているそうです。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希、え・内山大助】
(毎日小学生新聞2020年9月22日掲載)