2月22日の東京株式市場で、日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新して大騒ぎになりました。ニュースでよく「株価が上がった、下がった」と言いますが、株が注目されるのはなぜでしょうか。経済の大もとにある株とは、どのような仕組みなのでしょうか。【田村彰子】
◇そもそも株って何?
会社が事業をするために、お金を集める方法の一つです。お金を出すことを「出資」といい、出資した人たちは、出した金額に合わせた数の株を受け取り、その会社の持ち主(株主)になります。株主たちは会社を経営する人を決めて、任せます。会社の事業でもうけ(利益)が出ると、株の数によって分け前(配当)を受け取ります。会社の事業がうまくいかないと、株主が出したお金は戻ってきません。しかし、事業のために会社が借りたお金を、株主が返す必要はありません。
税金を扱う国の役所である国税庁によると、日本の会社約285万社のうち、約90%(2021年度)が株の仕組みで作られた株式会社です。
◇株の値段が上がったり下がったりするのはなぜ?
株が売り買いされた時の値段を、株価といいます。ものの値段は、みんなが欲しいと思うものは高くなり、欲しがらないものは安くなります。株も同じで、みんなが欲しがる株は高く、そうでない株は安くなります。
株を買いたい人が増えるのは、例えばその会社の商品がヒットした時です。もうけが増えて株主の分け前も増えそうだからです。株を持つ人は、買った時よりも高く売ってもうけます。もっと高く売れるようになると思って、株を買う人も増えます。
逆に商品の売れ行きが悪いと、株を売ろうとする人が増えます。もうけの分け前がなく、会社がつぶれれば株の価値がゼロになるからです。損が広がらないうちに売ろうとする人が増えます。一方で、株価がやがて上がると考え、株価が安いうちに買う人もいます。
◇注目されるのはなぜ?
株価には、その時の経済の様子が映し出されます。また株価は経済に影響を与えます。
景気が良い時には、株価は全体的に上がります。商品の売れ行きが良くなり、働く人の収入が増えて株を買う人が増えるからです。また株価が上がると、株を持っている人は自分の資産が増えた気分になってお金を使うので、景気が良くなります。反対に、景気が悪い時には株価が下がり、株価が下がると景気がより悪くなります。
株価全体の動きを見るために、多くの会社の株価から計算して一つの数字を出しているのが株価指数です。よく使われるのが日経平均株価です。東京証券取引所で扱われる企業の中から、日本経済新聞社が選んだ225社の株価の平均です。225社は定期的に入れ替えられます。
◇株価が史上最高値を更新したんだってね
2月22日の東京株式市場で、日経平均株価が終値は3万9098円68銭となり、34年ぶりに最高値を更新しました。3月4日には、4万円台に乗せました。
急に株価が上がった原因としては、日本の株が海外の投資家にとって魅力的に映り、株が買われていることがあります。
社会のデジタル化で需要が高まる人工知能(AI)など、最新技術に不可欠な半導体に関わる企業が世界中から注目されています。そして半導体を作る装置で強みを持つ日本の関連企業の株も買われ、株価が大きく上がりました。また、これまで成長が著しかった中国の情報技術(IT)関連株を買っていた投資家のお金が、中国の景気がにぶっていくのではないかという不安から、日本へ移ってきたという事情もあるようです。
◇今は「バブル経済」ではないの?
バブル経済とは、1980年代後半から90年ごろにかけて日本で起きた、株や土地などの価格が急激に上がり、それに伴って起きた好景気をいいます。この時期の89年12月29日に付けた3万8915円87銭がこれまでの株価の最高値でした。「バブル」は英語で泡の意味です。泡のように消えたバブル崩壊後は日本経済の停滞とともに株価も長く低迷し、2009年3月には最安値となる7054円98銭まで沈みました。
現在の市場関係者は、今の株高はこの時とは違うとしています。当時は、企業のもうけに見合わないほど株価が上がっていました。今は企業が経営を効率的にする努力をし、投資家もしっかり見極めて株を買っているようです。また、今はアメリカのドルに比べて日本の円の価値が低い「円安」の状況で、日本の株はドルを扱う海外投資家から見ればまだ「安い」と思われています。(2024年04月17日毎日小学生新聞より)