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【ニュースがわかる2024年6月号】巻頭特集は地震大国ニッポン 被害を減らすために

東日本大震災、原発事故から13年【ニュース知りたいんジャー】

2011年3月11日、最大震度7を記録する東日本大震災が発生しました。地震によって生じた津波で多くの命が奪われ、建物も壊れました。また、世界最悪レベルとなった東京電力福島第1原子力発電所事故が起こりました。今月で震災から13年になりますが、今も課題は残されています。【篠口純子】


 ◇どんな地震だったの?

 2011年3月11日午後2時46分、東北地方の三陸沖を震源とする巨大地震が発生しました。地震の規模を示すマグニチュード(M)は9・0で、国内での観測史上最大となりました。宮城県栗原市で震度7を記録し、宮城県、福島県、茨城県、栃木県の広い範囲で震度6強の強い揺れを観測しました。
 死者は1万5900人、行方不明者は2523人(23年3月、警察庁まとめ)です。亡くなった原因は、1995年の阪神大震災(M7・3)は70%以上が建物の倒壊や家具の転倒による窒息・圧死でしたが、東日本大震災では90%以上が津波による水死でした。全壊した建物は約13万棟に上り、このうち約12万棟が津波によって壊れたものです。


 ◇どうして津波が起きるの?


 海底の下で大きな地震が起きると、海底が沈んだり、盛り上がったりします。そのため、海底の上にある海水が大きく上下し、巨大な波となって周りへ広がっていきます。これが津波です。
 津波は、ふだんの海の波とは違い、海水全体が巨大な水のかたまりとなって押し寄せてきます。弱い地震でもゆっくり長い時間揺れると、大きな津波が生じることもあります。いったん波がひいても津波は繰り返しやって来て、最初の第1波よりも、第2波、第3波の方が高いこともあります。ひざの下くらいの高さ20~30㌢㍍程度の津波でも、人を巻き込んでしまうほど力があります。
 東日本大震災では、青森県から茨城県にかけての太平洋岸に、高さ約4~16㍍の津波が押し寄せました。福島県相馬市で9・3㍍以上、岩手県宮古市で8・5㍍以上、宮城県石巻市鮎川で8・6㍍以上などが観測されました。宮城県の女川漁港では、14・8㍍の津波の跡も確認されています。


 ◇子どもたちの被害は?


 東日本大震災で、幼児、児童、生徒、学生、先生の死者は合わせて600人を超えました。下校中や、下校後に自宅で津波にあったと思われます。
 中でも、宮城県の石巻市立大川小学校では、最も大きな被害がありました。地震発生から45~50分後に避難を始めましたが、津波にのまれました。児童108人のうち70人が死亡、4人が行方不明となり、先生と職員計10人も犠牲になりました。被災した校舎は、悲しい出来事を将来の人へ伝えるための「震災遺構」として保存されています。

東日本大震災から12年 宮城県  
震災遺構の大川小を訪れた人たち


 一方、2019年に開かれたラグビー・ワールドカップの会場になった岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムが建つ場所には、釜石東中学校と鵜住居小学校がありました。ここでは震災当時、中学生たちが小学生の手を引いて高台に避難し、津波を逃れて約600人が助かりました。
 釜石など三陸地方の沿岸部は、歴史的にたびたび津波に襲われているため「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。「津波が来たら、多くの人が助かるよう、各自がてんでんばらばらに高台へ逃げろ」という教訓です。東日本大震災は「津波てんでんこ」の教えを全国へ広めるきっかけとなりました。


 ◇福島第1原発事故って?


 福島第1原発は、福島県大熊町と双葉町にまたがり、6基の原子炉がありました。このうち1~3号機は、津波によって「冷やす機能」が停止しました。このため核燃料が熱で溶け落ちて原子炉が壊れる「炉心溶融(メルトダウン)」が起き、建物が爆発する事故につながりました。核燃料の中に含まれる放射性物質がまき散らされ、世界共通の基準で「レベル7」という最も深刻な事故となりました。
 政府と東京電力は、福島第1原発の廃炉に向けて作業を進めています。廃炉作業が終わるまで最長40年かかると見込んでいますが、作業は遅れがちです。例えば2号機では、溶け落ちた核燃料の取り出しを2023年度中に始める予定でしたが、やり方を見直すため3回目の延期となりました。
 福島第1原発事故の後、全国にある原発の運転が止まりました。その後、国の原子力規制委員会が、地震や津波の対策を強化した新たな基準を定めました。この基準をもとにした審査に合格し、原発が建っている自治体の同意を得た原発に限って再稼働(再び運転を始めること)されています。全国17か所にある原発(研究用を除く)のうち、これまでに西日本にある12基が再稼働しました。

福島第1原発


 ◇今も戻れない人がいるの?


 現在も約3万1000人(2023年2月現在)が全国各地で避難生活を送っています。福島第1原発周辺の放射線量が高い地域は避難指示区域に指定され、立ち入りが禁止されました。住民は福島県内の離れた地域や県外へ避難し、12年5月には約16万人に上りました。
 避難指示区域は段階的に解除されつつありますが、今も約2万6600人が避難生活を続けています。避難指示が解除されても、避難生活が長くなりすぎたため仕事や生活の場所を移していて、古里へ戻りたくても戻れない人たちもいます。
 現在は、福島県の南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、葛尾村、飯舘村の7市町村の一部が「帰還困難区域」という避難指示区域になっています。(2024年03月06日毎日小学生新聞より)