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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

秋のクマ、出没に注意!【ニュース知りたいんジャー】

今年は、クマが人を襲う被害が増えています。クマは冬眠前に餌を求めて行動が活発になります。今年は餌となるドングリの不作が予測されることから、秋から冬にかけてクマが人里へ出没する可能性があり、国などは注意を呼びかけています。【篠口純子】


 ◇どんな動物?


 日本には、ヒグマとツキノワグマの2種類が生息しています。ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州、四国にすんでいます(九州では絶滅したとされています)。ヒグマはツキノワグマよりも大きいです。ツキノワグマは体の毛が黒く、胸に白い三日月模様があります。
 するどいツメを持ち、木に登ることもできます。時速40㌔㍍で走り、泳ぎも得意です。12月ごろから4月ごろまで冬眠します。肉や魚も食べますが、食べるものの9割は植物です。冬眠から目覚めた春は新芽や若葉、前の年に落ちたドングリなどを食べます。夏はアリやハチなどの昆虫、秋になるとドングリなど木の実を食べます。
 餌の少ない冬を乗り越えるために、冬眠してエネルギーの消費を減らします。冬眠する前に餌をたくさん食べて脂肪を蓄えないといけないので、秋は活発に動き回るのです。


 

◇被害は増えているの?


 今年4月から7月末までの間にクマが人を襲った被害は54件に上り、同じ時期としては現在の形で集計され始めた2007年度以降で最も多くなりました。1年を通じて最も多かったのは10年度の145件で、今年は当時のペースを上回っているといいます。北海道、青森、秋田、宮城、岩手、福島、新潟、富山では、道や県がクマ出没警報や注意報を出して、気をつけるよう呼びかけています。
 秋田県では10月6日までに31人が襲われてケガをし、過去最多を更新し続けています。北東部の鹿角市では、小中学生が「クマよけ鈴」をかばんなどにつるして通学しています。クマよけ鈴は、19年9月に通学中の中学生がクマに耳をかまれてケガをしたことをうけ、22年度から市内計10校の小中学校の児童・生徒に配られています。


 ◇なぜ人里に出てくる?


 クマは森や山の中にすんでいます。このため、キノコ狩りや山登りなどで山へ入って被害にあうケースが半数以上を占めていました。ところが19年度以降は、農地や住宅地・市街地など人が住んでいる場所での被害が増えています。
 今年の秋は東北地方で、クマの餌となるブナの実がとても少なくなる「大凶作」になると予測されています。国の役所の林野庁東北森林管理局は毎年5~6月、青森、岩手、宮城、秋田、山形の5県のブナの開花状況を調べ、実になるかどうかを予測しています。今年は5県すべてで「大凶作」となる見込みで、統計が残る04年度以降で5県すべてが「大凶作」と予測されるのは初めてです。人がけがをする被害が過去最多だった10年度も、多くの県でブナが大凶作でした。山で餌を見つけられないクマは、人里の柿や栗、人間が捨てた生ゴミを目当てに山からおりてきます。


 ◇里山が減っている?


 里山が減ったことも、クマが人里へ出没するようになった理由の一つです。昔、山と人里の間には「里山」があり、野生動物と人間の境界になっていました。里山は、人が手をかけて管理していましたが、住む人が少なくなる「過疎化」や、お年寄りが増える「高齢化」などにより、手入れが行き届かなくなりました。その結果、人間の住む地域とクマの生息する地域が近づいています。
 野生動物の調査や研究をしている会社「東北野生動物保護管理センター」(宮城県仙台市)の宇野壮春さんは「人が山を利用しなくなり、動物の生息地が広がっています」と話します。手入れされず草木が生い茂る畑や森は、クマにとって隠れ場所となり、隠れながら移動して人里へ出没します。人里で収穫されずに放置されたままの柿や栗なども、クマを引き寄せる原因となります。
 

◇もし出合ったら?

 クマは逃げるものを追いかける習性があり、背中を見せて逃げると攻撃される可能性があります。静かにその場を離れましょう。宇野さんは「クマを興奮させないよう、大声を出したり、走って逃げたりするのはやめましょう。朝や夕方はクマの行動が活発になります。クマを見かけたら家に入って、大人に知らせてください」と話します。万が一、とても近い距離で出合ってしまったら、地面に伏せて手で首を守ります。

地元の小中学生に貸与されているクマよけ鈴=秋田県鹿角市で2023年9月4日
 

 また、クマを人里へ近づかせないことも大事です。クマは一度おいしいものがあることを知ると、繰り返し出没します。これを防ぐために、生ゴミや収穫した農作物などを野外に放置しない▽柿や栗は早めに取る▽キャンプや遠足で出たゴミは持ち帰る――などの対策をとりましょう。(2023年10月11日毎日小学生新聞より)