Q 海の水はなぜしょっぱいの?
塩のもとが溶けている
A 塩が溶けているからです。海水中には、塩のもとになる「塩素」と「ナトリウム」という二つのイオンが、ばらばらにあります。たばこと塩の博物館(東京都渋谷区)の学芸員、高梨浩樹さんは「私たちが塩味と呼んでいるものは、塩水の味です。塩素だけ、ナトリウムだけでは、しょっぱくなりません。湿っている口の中で、塩素とナトリウムが同時にあることを舌が感知しているのです」と説明します。
海に塩が溶けている理由は、約46億年前に誕生したといわれる地球の成り立ちと関係しています。
最初の地球は、隕石がぶつかりながら集まり、熱く溶けて大きな塊になって生まれ、海がありませんでした。地球が冷えてくると、地球をおおっていた分厚い水蒸気と火山性ガスが酸の雨となって降り、海ができました。「初めて海ができる時、火山性ガスに含まれている塩素と、岩石から酸で溶かし出された金属のナトリウムが海の中で出合って、両方が今でも溶けているんです」(高梨さん)=下のイラスト。場所によって少しずつ違いますが、海の塩分濃度は約3・4%で、ほとんど変化していません。
人の細胞は、一定した塩分濃度(約0・9%)に浸っていなければ活動できません。高梨さんは「細胞にとっての一定の濃度という環境は、海のなごりと考えるのが妥当でしょう」と話し、「塩が生命維持にかかわるもので全くなかったならば、塩味はなかったかもしれません。ちょとだけあると『おいしい』と感じるように、私たちの体はうまくできています」と指摘します。確かに、エネルギーになる「甘いもの」はいっぱいあってもおいしい味ですが、「しょっぱいもの」は多過ぎたら食べられませんね。
博物館で高梨さんの説明を聞いたある小4の女の子は「しょっぱいは、塩の中にあると私は思っていたのだけど、私の中にあるんですね」と印象に残る言葉を残したそうです。【毎日小学生新聞編集部】
(「疑問氷解 Vol.7(毎日小学生新聞)」より)