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蚊に刺されても痛くないのはなぜ?【疑問氷解】

Q 蚊に刺されても痛くないのに、注射が痛いのはなぜ?(東京都世田谷区、小6)

針より細い口をふるわせてプスッ

 A 蚊が血を吸うときのメカニズムを研究し、痛くない注射針を作ろうとしている、関西大学システム理工学部機械工学科の教授、青柳誠司さんによると、蚊の口(針)の構造と細さ、皮膚を刺したときの動きなどに、痛みを感じさせない秘密があるそうです。

 蚊の口は七つのパーツでできていて、このうちのこぎりのように先がギザギザになった二つのパーツと、血を吸うためのパーツを合わせた三つを皮膚に挿し入れます。ギザギザの先端の、とがった部分しか皮膚に触れないので、ほとんど痛みを感じさせず、すっと皮膚に刺さります。

 三つのパーツはそれぞれ直径0.015~0.05ミリメートルしかありません。髪の毛の太さは0.1ミリメートル前後なので、その半分以下です。三つのパーツを連動させ、目に見えないほど高速に上下に振動させながら、皮膚に差し込むので、痛みを感じにくいのです。

 また、蚊の唾液には、血が固まるのを防ぐ成分が含まれていて、それが痛みを感じにくくさせる働きも持っています。

 皮膚の表面には「痛点」という痛みを感じる点が1平方センチメートルに100~200個もあります。注射で痛みを感じるのは、針が痛点に当たるからです。予防接種などで使われる針の直径は通常、0.4~0.5ミリメートル前後ですが、細い針の方が、痛点を避けられるので痛みを軽くできます。

 医療機器メーカーのテルモが開発した注射針「ナノパス」は、世界で一番細い0.18ミリメートルで、髪の毛と同じくらいの太さです。針が細いと、痛みは軽くなりますが、薬剤が中を通りにくくなります。このためナノパスは、皮膚に刺さる部分は細く、根元に近い部分は太くなっています。作り方が難しいので、通常の注射針よりも高額です。

 ナノパスは主に、I型糖尿病という病気で、インスリンという薬を1日に何度も自分で注射しなくてはならない人が使っています。I型糖尿病の患者には子どももいます。毎日のことなので、痛みがあると大きなストレスになります。テルモの駒田裕亮さんによると、ナノパスは、こうした患者さんが、少しでも毎日の注射のストレスを感じないようにと開発されたそうです。【大井明子】

                     (「疑問氷解Vol.6」より)