Q バケツに水を入れて勢いよく回すと、水がこぼれないのはどうしてですか?(愛知県一宮市、中1)
「感じる力」遠心力がはたらく
A 日本科学未来館の科学コミュニケーター、鳥畑英子さんに教えてもらいました。
物体は、外から力を加えられない限り、その状態を保とうとします。止まっているものは止まったまま、動いているものはその速さのまま動き続けようとします。これを慣性の法則といいます。
バケツも中の水も、本来は慣性の法則でまっすぐ進もうとしています。たとえばひもにつるしたバケツをふり回し、ある場所でひもを切れば、バケツと水は一緒に飛んでいきます。しかし、ここでは腕でバケツを回すので、逃げていこうとする水をバケツが円軌道に戻しています。つまり、水はまっすぐ進みたいのに、強制的にバケツに引き戻されるということです。このとき水は、「遠心力」という、外向きの力を「感じて」います。
水が「感じる」とはどういうことでしょう。たとえば、みなさんはカーブを走る車に乗っているとき、体が外側にふられるような経験をしたことはありませんか。まっすぐ進もうとしている体が強制的に内側に引っ張られるため、外側に力がかかっているように「感じる」のです。バケツの水も同じように考えられます。遠心力とは、円運動をしているものの中の人が感じる力のことなのです。
バケツが頭上近くに来たとき、水は地球の重力(下向きの力)で下に落ちようとしますが、バケツを勢いよく回すと、上向きにはたらく遠心力の大きさが重力を上回るため、水は落ちないのです。ポイントは「勢いよく回す」ということ。ゆっくり回すと、水はこぼれてしまいます。速く回すほど、バケツが水を引き戻す力が大きくなるため、遠心力も大きくなります。【毎日小学生新聞編集部】
(「疑問氷解Vol.8」より)