お正月にもらう「お年玉」が楽しみの人も多いでしょうね。お年玉の由来は、紀元前からとか、古代中国の宮廷で始まったなど、いろいろな説があります。世界のお年玉事情について、知りたいんジャーが調べました。【木谷朋子】
◇お年玉のある国は?
日本のお年玉のような習慣があるのは、中国や台湾、シンガポール、韓国、北朝鮮、ベトナム、マレーシアなど、歴史的に中国文化の影響が強い国や地域が中心です。日本のように太陽暦(新暦)ではなく、昔から使われてきた太陰暦(旧暦)の1月1日(旧正月)を盛大に祝う地域が多いです。旧正月は「春節」と呼ばれ、だいたい1月下旬~2月中旬ですが、日にちが毎年変わります。2023年の旧正月は1月22日、春節の休みは1月21~27日です。
お年玉の起源にはいろいろな説があります。中国では、大人が子どもにお金を贈ることを「圧歳銭」と言い、もともとは、子どもを災いから守るためにあった習わしです。今はいつもお世話になっている人への感謝やお祝いの気持ちを伝えるため、両親など目上の人にも上げるようになりました。
ベトナムでも、旧正月に新しいお札を赤い封筒に入れて渡す「リシ」があります。
ヨーロッパやアメリカなどキリスト教徒の多い国では、クリスマスが一大行事なので正月のお年玉はありません。でも、家族や親戚、友人などに渡すクリスマスプレゼントが、お年玉と同じような役割をしているといえそうです。
◇「ご本家」中国のお年玉は?
中国ではお年玉を、旧正月に渡します。家族や親戚の子どもに配るのは日本と一緒ですが、地域や職場によっては年上の人や会社の部下などにも配ります。言い方も少し変わり、子どもに渡すのは「圧歳銭」、両親や会社の部下など大人に渡すお年玉は、赤い封筒や袋に入れるので「紅包」と言います。もともとはお小遣いやチップ、ご祝儀の意味です。赤は中国で縁起が良い色とされています。
お年玉の渡し方も変わってきています。最近は中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」を使い、電子マネーの「電子版紅包」で贈る人も増えています。
気になる金額ですが、これも地域や個人でさまざまという意見が多く、100元(約2000円)が一般的。少ないと50元(約1000円)、多いと1000元(2万円)以上もあるそうです。もらったお年玉は、子どもが自由に使える場合もあれば、親が預かることもあり、家庭によってまちまちです。また、子どもとしてお年玉がもらえるのは中国では成人となる18歳までと言う人が多く、取材した中国人の大学生たちは、大学に入ってからもらえなくなったと話してくれました。
◇香港や台湾では?
香港では、中国本土で紅包と呼ばれるお年玉を「利是」と言います。やはり赤い袋や紙に包んで渡します。子どもに渡す利是は「圧歳銭」と呼びます。
中国本土と同様、家族や親戚、知り合いの子どもに渡しますが、両親や祖父母、会社の部下や得意先、マンションの管理人や行きつけの食堂の人など、お世話になっている身近な人たちにまで、金額は小さくてもたくさん配るのが香港流です。結婚している人が独身の同僚や友人らに配る習慣もあります。
相場は、10香港㌦(1香港㌦は約17円)や20香港㌦程度が一般的。身内や大事な人には100香港㌦や1000香港㌦もありえるそうです。金額が多いか少ないかはあまり気にせず、新しい年に「福」を配る意味で多くの人に配ります。利是は、結婚式や誕生日、出産などのお祝いとして渡すこともあります。会社の社長や上司が部下に配る利是は「開工利是」と呼ばれます。
台湾のお年玉も基本的には中国本土と同じで、子どもに渡すのは「圧歳銭」、お年玉の意味でよく使われる言葉は「紅包」です。子どもは就職するまでもらうことが多く、女性は結婚するまでという人もいます。最近は、両親やお世話になっている人にも配る傾向が増えているそうです。小学生がもらうお年玉は台湾元で200元(約890円)~800元(約3500円)が平均的な金額だそうです。
◇お隣の韓国は?
韓国でも、お年玉は旧正月にもらいます。韓国では礼儀などを重んじる「儒教」という伝統的な考え方が尊重されていて、旧正月には親戚が一堂に集まって新年のあいさつ「歳拝」をします。目上の人に対する丁寧なあいさつのことで、お年玉も「セベットン」と言われます。
歳拝は、曽祖父や親世代の家などに一族が集まり、両手を額に当てて膝を床につき、目上の人に対して深々とお辞儀をします。このあいさつが終わると、祖父やおじさんたちが、子どもたちにお年玉を手渡しながら、新年に向けたちょっとした励ましの言葉をかけます。お金をそのままで渡すことがほとんどで、親戚以外や親からもらうことはあまりありません。
お年玉がもらえるのは20歳くらいまでが一般的ですが、男性は大学の在学中に兵役にいくことが多いため、その前に少し奮発してもらったりもします。幼い子どもの場合は、もらった子どもが後で、親に渡すことが多いです。金額は家によってまちまちで、平均は3万㌆(約3000円)~5万㌆(約5000円)。10万㌆(約1万円)以上の人もいます。韓国ではキャッシュレス化がかなり進んでいますが、お年玉は現金中心です。
◇日本では昔は違ったの?
日本では昔、田畑を守ってくれる「歳神さま」にお供えする丸い鏡餅のことを、「御歳魂」と言いました。供えた餅は、一家のあるじやいちばん年上の人が切り分け、「新しい一年を元気で過ごしましょう」という意味で、家族や使用人に配る習わしがありました。ところが、昭和30年代(1955~64年)から、都会を中心に餅がお金になり、「お年玉」は親や祖父母や親戚など、大人が子どもに渡すものへと変わっていきました。都市化や高度経済成長とともに、3世代が一緒に暮らす「サザエさん」のような大家族の家が減る「核家族化」も背景にあるといわれています。
日本では、中国などのように赤い袋が中心でなく、いろいろな袋が使われます。紙製品メーカー「マルアイ」の最新の調査によると、小学生のお年玉の相場は、1000~5000円。お正月に親戚が集まる家が減り、くれるのは親や祖父母が多くなりました。最近では成人した後も、高額のお年玉をもらう人もいるそうです。
(2022年12月28日掲載毎日小学生新聞より)