2022年7月20日に、第167回 芥川賞・直木賞が決定しました。
芥川賞の90年近い歴史で初めて全ての候補作が女性作家の作品となり、今回も注目が集まりました。
「芥川賞」と「直木賞」、なぜ作家の名前が使われているのでしょうか?
賞の違いや、受賞の条件などみてみましょう。
作家名がそのまま文学賞の名前になる理由
文学賞には、吉川英治文学賞や芥川龍之介賞、直木三十五賞、谷崎潤一郎賞、泉鏡花(いずみきょうか)文学賞、大佛次郎(おさらぎじろう)賞など作家の名を冠したものがたくさんあります。これらは文学史・文壇やそのジャンルの歴史において、大きな功績を残した作家をたたえるために創設されたからです。
吉川英治(1892〜1962年)
幅広い読者層に親しまれた小説家で、「国民文学作家」と呼ばれた=1939年
吉川英治文学賞も、彼が得意とする作風をたたえるもの。吉川作品の魅力は、史実にもとづく歴史小説でありながら、歴史上の人物がまるで目の前にいるかのように描かれた、ストーリー展開の面白さにあります。「宮本武蔵」や「三国志」「新・平家物語」などでは歴史小説というジャンルを超え、老若男女の幅広い読者を獲得したのです。
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大衆文学に贈られる
吉川英治文学賞は毎年3月、その前年に発表された大衆文学を対象に、文学賞、文学新人賞、文庫賞などが選ばれます。2022年3月に発表された第56回吉川英治文学賞は京極夏彦さんの『遠巷説百物語』(KADOKAWA)と、中島京子さんの『やさしい猫』(中央公論新社)に決まりました。また、第43回吉川英治文学新人賞には一穂ミチさんの『スモールワールズ』(講談社)のほかに、小田雅久仁さんの『残月記』(双葉社)が選ばれました。
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芥川賞は新人作家、直木賞は中堅作家に
2021年1月に発表された第164回芥川賞は、史上3番目となる21歳8ヶ月の若さで、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』(「文芸」秋季号)が受賞し、デビュー2作目ということも注目されました。芥川賞は、期間内に文学雑誌や単行本などで発表された純文学(※)の短編作品が選考の対象で、文壇の“新人賞”とされています。
芥川龍之介(1892~1927年)
東京帝大在学中の1914年に菊池寛や久米正雄らと同人誌「新思潮」を刊行し、創作を始める。
翌年に自身の代表作の一つとなる「羅生門」を発表。1916年には短編「鼻」が夏目漱石に激賞される。
直木三十五(1891~1934年)
新聞や雑誌に大衆文学を数多く執筆し、その地位確立と発展に貢献した。
31歳のとき、作家名を直木三十一として以降、年齢を名前に。ただ毎年名前を変えることを菊池寛にとがめられ35歳でやめた。
同時に発表される直木賞も、創設当初は大衆文学の新人作家が選ばれていましたが、近年では独り立ちしている中堅以上の作家の作品が受賞することが多いです。
芥川龍之介の出世作「鼻」の冒頭部分の直筆完成原稿。芥川は若くしてその才能を文壇から認められた=川島幸希・秀明大学長提供
2022年7月20日に発表された第167回直木賞は、窪美澄さんの『夜に星を放つ』(文藝春秋)、芥川賞には、高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)に決まりました。
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芥川賞と直木賞はなぜ同時発表?
芥川賞と直木賞も、雑誌「文芸春秋」を創刊した作家の菊池寛によって1935年に設立された文学賞であるため、同時に発表されます。両賞は文芸春秋社内にある日本文学振興会が主催し、1月と7月の年2回、作家たちが審査し授賞作を決めます。
1875年創業の築地の料亭「新喜楽」。昔から政財界の大物が密談したという。
ここで芥川賞・直木賞の審査・選考をするのは、料亭ならば秘密を守ってくれるからだそう
選考場所はどちらも東京・築地の料亭「新喜楽(しんきらく)」。芥川賞が1階で、直木賞が2階で選考されるのが慣例です。
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