もうすぐクリスマス。ツリーやイルミネーションで街が華やかに彩られています。ワクワクしながら、クリスマスを心待ちにしているみなさん、クリスマスの習慣の由来について、どれだけ知っていますか。【長尾真希子】
◇クリスマスの由来って?
クリスマスは、英語でキリストのミサ(礼拝)の意味で、イエス・キリストの誕生(降誕)を祝う日のことです。
キリストが何月何日に生まれたのかはわかっていませんが、4世紀には、12月25日がキリスト教の降誕祭とされていたといいます。
日本では、イエズス会の宣教師、フランシスコ・ザビエルの願いから、後継者が1552年に今の山口県で行ったのが最初のクリスマスの集いだといいます。宣教師のルイス・フロイスは、1567年に大阪・堺で敵対する武士が一緒にミサに集った「クリスマス休戦」を記録しています。その後、徳川幕府のキリスト教禁止令で表立った催しはできなくなりましたが、明治維新後に復活しました。
◇クリスマスツリーは?
クリスマスツリーの起源は、古代ヨーロッパのドイツです。一年で最も昼が短い冬至に生命力のシンボルとして、モミやヒイラギ、ツゲなどの常緑樹(一年中緑の葉がある木)を飾った風習が由来です。16世紀になると、聖書でアダムとイブが食べたとされるリンゴの実などの飾りを枝や葉につるすようになりました。
家の中でツリーを飾る習慣は18世紀ごろにドイツで流行し、他のヨーロッパの国々やアメリカへ広まりました。日本初のクリスマスツリーは1860年、プロイセン(今のドイツ北部からポーランド西部を支配した国)の公使オイレンブルクが飾ったといいます。
電灯の装飾の数が世界一多い「ギネス世界記録」に認定されたツリーが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にあります。約61万個の装飾が光り輝く、高さ30㍍の巨大ツリーが3年ぶりに復活しました。
◇サンタさんのこと教えて
日本で「サンタさん」として親しまれるサンタクロースは、弱い人や子どもたちを助けた「セント・ニコラス」というキリスト教の聖人がモデルです。日本人でただ一人、グリーンランド国際サンタクロース協会の「公認サンタクロース」として活動するパラダイス山元さん(60)に話を聞きました。
1998年に公認試験に合格したという山元さん。デンマークで開かれた「世界サンタクロース会議」に出席し、煙突のぼりやクッキーの早食い、「HoHoHo~」の声など、数々の難関試験に挑んだそうです。試験の様子は今月発売された絵本「サンタさんみっけ!」にも楽しく描かれています。
今年のクリスマスについて聞くと、「クリスマスイブは、さまざまな事情で家に帰ることができない子どもたちのところを優先して回ります。クリスマスの朝に、太陽が昇るまでに任務を終わらせないといけません」と忙しそうです。
どうしたらプレゼントがもらえるかも聞いてみました。「1年間よい子だったことを手紙に書いて、クッキーなどお菓子や飲みものを用意して、お部屋をきれいにして、クリスマスイブは早めに寝るとプレゼントが届くかも」とアドバイスしてくれました。
◇チキンを食べるのは?
クリスマスにチキンを食べる人が多い日本。驚くことに、クリスマスにチキンを食べる習慣は、日本だけだそうです。食文化として日本に根付かせたのはなんと、日本ケンタッキー・フライド・チキン(日本KFC)でした。
日本KFCがクリスマスキャンペーンを始めたのは1974年。ある日、店の近くの幼稚園から「フライドチキンを買ってパーティーをしたい。サンタクロースの姿で、クリスマス会に来てもらえませんか?」と相談されたのがきっかけでした。サンタさんの格好をした店長が「メリークリスマス!」と言って訪れ、踊りも披露すると、子どもたちは大喜び。次第に学校などから注文が入るようになったそうです。これをヒントに営業担当の人がキャンペーンを始め、「クリスマスにはフライドチキン」が定着したといいます。日本KFCの広報室は「意図して食文化を作ろうとしたわけではないのですが、食を通じて社会全体が盛り上がることはとてもうれしい」と話しています。
◇ケーキじゃない国も?
日本のクリスマスケーキの発祥は、ペコちゃんのマスコットキャラクターで有名な「不二家」です。神奈川県横浜市で創業した1910年に発売したといいます。100年前の22年に今のようなイチゴが乗ったケーキが登場したそうです。
一方ドイツでは、雪のように粉砂糖をまぶした「シュトーレン」です。ナッツやドライフルーツなどが混ざった甘いパンで、毎日少しずつ切って食べ、クリスマスの訪れを楽しみに待ちます。
イギリスの「クリスマスプディング」は、日本人がイメージするプリンとは違って、1か月前から熟成させるお酒風味の強いケーキです。11月下旬に家族全員が一人ずつ願いごとをしながら、順番に材料をかき混ぜて作るといいます。
フランスでは木の切り株の形をしたロールケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」、イタリアではドライフルーツ入りの甘いパン「パネトーネ」、アメリカでは人の形がかわいい「ジンジャーブレッドクッキー」など、世界では見た目や味わいの違ういろいろなスイーツがクリスマスに食べられています。(2022年12月21日掲載毎日小学生新聞より)