知識積み重ねるノート【ニュース知りたいんジャー】

 新学期が始まり、新しいノートを使い始めた人も多いでしょう。学校の授業と切り離せない身近なノートは、いつからあるのでしょうか。知りたいんジャーが歴史を調べ、専門家におすすめのノートの取り方を聞きました。【田村彰子】  

 ◇ノートはいつごろからあるの?

 明治時代初期の学校では、高価だった紙ではなく、石盤がよく使われていました。石盤は、粘土岩などを長方形に切りとった小さな黒板のようなもので、ろう石をペン状に加工した石筆で書きます。書いた文字は布などでふくと簡単に消えるので、繰り返し練習する学習に合いましたが、記録には残らず、たくさんの知識を書きためていくには向いていませんでした。  日本で最初に鉛筆を使うのに適したノートが売り出されたのは、明治時代の中ごろのことです。「東京大学前にあった文房具店『松屋』がノートを販売し、大学ノートと呼ばれました。しかしこれは、当時のエリートである大学生が使うとても高価なものでした」と、ノートの歴史に詳しい神奈川県葉山町立上山口小学校教頭の石上佐知子さんは話します。その頃、ノートのようなものとして一般的に使われていたのは、半紙を二つ折りか四つ折りにして、ひもでとじたものでした。

 ◇小学生用のノート、いつできたの?

 小学生用のノート「学習帳」ができたのは、1904(明治)37)年のことです。大阪の出版社・中村鐘美堂が作りました。ほぼ同時期の09年、東京の文運堂も学校用ノートの販売を始めています。文運堂によると、鐘美堂のノートはホチキスでとじられ、文運堂は糸でとじていたそうです。子どもたちが毎日学校でノートを使うためには、洋紙がたくさん作れて安く買えなければなりません。明治時代の後半から大正時代にその体制ができ、03年に小学校の教科書が和紙から洋紙に変わっています。  大正時代ぐらいまでは「雑記帳」や「練習帳」などと呼ばれていて、学習帳となったのは昭和に入ってからのことです。大正時代には、地域ごとに選定された「検定学習帳」を小学校で使うようになりました。そうして、鉛筆とノートが小学校で使う基本的な道具として広がっていきました。

 ◇どうやったらきれいになるの?

 ノートは、自分のためのものです。少しぐらい字が汚くても見た目が良くなくても大丈夫です。「東大合格生が小学生だったときのノート」などの著書がある太田あやさんは「字をきれいに書こうと力を入れすぎないで、肩の力を抜いてください。読み返した時に自分が読める文字を書くのが大切で、それができるようになったら、テストで採点する人が困らない文字を目指しましょう」と話します。  ノートをきれいに取ることに集中し、何も考えずに黒板の文字を書き写すロボットになってはいけません。太田さんは以前、東京大学の学生に聞いたところ「見直すのが嫌にならない程度の字で書き、メモを取ることを大事にしている」と話したそうです。何を考えたか、どんなふうに問題を解いたかなどを書き残すことに力を入れましょう。区切りの線やマス目は、自分が書きやすいと思うノートを選びましょう。

 ◇おすすめの取り方は?

 小学生になったばかりの人や、低学年の人は黒板を書き写すだけで精いっぱいかもしれません。「黒板の書き写しは、先生が全て書いてから始めるのではなく、授業の内容を理解しながら書き出しを早くするとよいでしょう」と太田さんはアドバイスします。  しっかり書き取れるようになったら、先生が話した内容で「大事だな」と思った点をメモすることを、太田さんはすすめます。最初は短い一言でもかまいません。続けていくうちに、メモが取れるようになっていきます。写真のように、ノートに縦の線を引いてメモの欄を作ることで、「メモを取ろう」と意識できます。黒板を書き写す場所も狭くなるので、段落替えも簡単になり、字のバランスを取りやすくなる人が多いそうです。  先生の話を書き取ろうとすると、授業を集中して聞けるようになり、話のポイントをつかむ力が身についてきます。

 ◇ノートって何のために取るの?

 1872(明治5)年に小学校の教科や指導方法を定めた「小学教則」では、すでに先生が黒板に書いた文字を石盤に写して練習することが示されていたそうです。石上さんは「小学校になる前の寺子屋でも、先生に教わったことを書いたり、繰り返し練習したりすることで、文字だけではなく教科の内容を覚えてきました」と説明します。  「ノートは未来の自分にその授業の内容を教えてあげるもの」と太田さんは話します。そのために必要なのは、黒板に書かれた内容だけではありません。先生が何に重きを置いて説明したのか、自分は何を考えたのかを書くメモのような役割もあります。ノートを読み返すことで、授業を思い出し、知識を積み重ねていくことができます。(2022年04月13日掲載毎日小学生新聞より)