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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

ブロックチェーンでアートの価値を支える【起業家から君へ】

話を聞いたひと 施井泰平(しいたいへい)さん スタートバーン代表

 週刊エコノミストで連載中の「挑戦者2021」。優れたアイデアや斬新なサービスで世の中を良くしようとする企業の取り組みを紹介しています。本サイトでは、誌面で紹介された「挑戦者」たちがどんな子どもだったのかを聞きました。

※「挑戦者2021」はエコノミストオンラインへhttps://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210608/se1/00m/020/059000c

有名なギャラリーにかかわらないとアートとは認知されない──。

 絵画などをはじめとしたアート作品が世界中で売買されるとき、その価値を保障するのはギャラリー(画廊)が発行する証明書です。しかし、証明書はギャラリー独自のもので、改ざんやコピー、紛失のリスクが高いという問題があり、ビジネスの信用性を損なう要因になっています。

 たとえば、不動産の場合は、土地を持っている人が誰か、所有者が誰から誰に移転してきたかという情報を国が登記し、管理しています。これによって、土地や家が間違いなくその人のものであるという証明ができます。一方、アートはグローバルに流通するもので、国をまたいだ登記のシステム構築は非常に難しく、これまでは存在しませんでした。

 そこで、仮想通貨(暗号資産)などに使われている「ブロックチェーン技術」を利用し、世界共通となる登記のインフラを作っています。作品の諸情報をデジタルデータ化し、作品名や作者名、制作日、情報の登録者、作品が誰の手に渡ってきたかという来歴情報、作品を展示する際のルールなど登録できます。

 また、「ハイパースペクトル」というキャンバスや色の素材までが分かる情報や、分子レベルでID(識別情報)を刻印できる透明なケイ素を吹きかけて、その情報を保管することもできます。また、さらにICタグを作品に付けて、それを利用して情報の確認もできます。この仕組みを「スタートバーン・サート(CERT.)」と呼んでいます。

・こどもの頃はどんな性格でしたか?

静かでほとんど会話をしない子供でした。アメリカンスクールの先生にもらった虫眼鏡で色んなものを拡大して見ていました。

・こどもの頃の夢を教えてください。

一番小さい頃に言った夢はホームレスになること。その次はお母さんになることでした。小学校の3年生くらいから宇宙飛行士になるか漫画家になるか迷いはじめて中学校に入るころにはアーティストになりたいと思うようになりました。

・こどもの頃によく読んでいた本があれば教えてください。

 Where the Sidewalk Endsという詩集が好きでした。また、Choose Your Own Adventure Bookという行き先を選びながら読み進めていくシリーズに夢中になっていたころもありました。自分が小さい頃に流行っていたCharlie and the Chocolate Factory(チャーリーとチョコレート工場)なんかもよく読んでいたのを覚えています。

・仕事をしていてよかったこと、大変だったことを教えてください。

 アーティストとして一人で作品を作っていた時との一番の違いはビジョンや目標を他者に伝えてお金や協力者を集める必要があることです。自分がやりたいことを言語化したり事業アイデアに落とし込んだり、さらにはそのためのお金集めしたり人集めするのは大変なことですが、結局残るのはその経験を通じてしか作れなかった物、出会えなかった人や経験ばかりなので、過ぎた今は「やっていて良かった」と思うことしかありません。

・子どもたちにメッセージをお願いします。

 人生というのは、ゴールがあるかもわからない、いわば大きな大きな砂漠の真ん中から突然始まる物語のようなものだと思っています。人は砂漠の中で「どこか」に向けて歩んで、やっぱりこっちの方向に目標があるかもと歩む方向を変えたり、あるかもわからない目標に向かって砂漠の中を彷徨います。でもそんな中で人生に意味を与えるのは目標の存在しかありません。運が良ければ自分が歩んだ先にそれがあるかもしれません。運悪くたどり着けないかもしれません。そもそも存在しないのかもしれません。でも最終的に砂漠のなかで彷徨い続けた人生だったと思うよりは目標を定めて歩くのが良い砂漠人生なはずです。人生に大きな意味を与えたいのなら、大きすぎるくらい大きな目標を定めてそれに向けて、歩み続けるのが良いんじゃないかと思います。(聞き手=白鳥達哉・エコノミスト編集部)