日本発の遺伝子検査会社「バリノス」、がんや遺伝病への貢献も期待【起業家から君へ】

話をきいたひと 桜庭 喜行(さくらば よしゆき)さん バリノス代表取締役CEO

週刊エコノミストで連載中の「挑戦者2022」。優れたアイデアや斬新なサービスで世の中を良くしようとする企業の取り組みを紹介しています。本サイトでは、誌面で紹介された「挑戦者」たちがどんな子どもだったのかを聞きました。※エコノミストオンライン「挑戦者2022」はこちら

子宮内の細菌に着目し、世界で初めて「子宮内フローラ検査」を独自開発・臨床検査として実用化したバリノス。がんや遺伝病などでの貢献も期待できる。

ゲノム関連の技術を使った遺伝子検査サービスを提供しています。主力事業は不妊治療に貢献ができる遺伝子検査で、元理化学研究所の研究室で勤務していたスタッフなどの人材を擁し、検査自体の開発もできる日本でも数少ない企業です。

2017年12月には、世界で初めて子宮内フローラ(子宮内の細菌)検査の実用化に成功しました。子宮の中は長らく無菌であるといわれていましたが、近年の研究で子宮内にも菌がいることが15年に明らかになりました。そして、米スタンフォード大の研究で子宮内フローラの環境が乱れていることで妊娠の成績が下がることが発見されたのです。これを産業応用できれば、不妊に悩む人の助けになることができるのでは、との思いから16年末の論文データを基に会社を立ち上げました。

体外受精では、完璧な胚(はい)(受精卵)を子宮内に戻しても、成功率は60~70%程度です。検査をすることで妊娠率を左右する子宮内フローラの環境を把握し、環境の良い状態のときに胚を戻すことで妊娠率の向上につなげようというのが狙いです。妊娠率の向上に相関があるとされるのが、ラクトバチルスと呼ばれる乳酸菌で、検査ではラクトバチルスがどの程度、子宮内に存在するかを調べることができます。

検査は臨床検査として医師を通じて提供され、私たちは受け取った検体を解析し、医師に報告します。サービスの提供当初は、体外受精を何度か行った経験のある患者が利用されることが主でしたが、現在は患者の年齢なども考慮して、最短で妊娠に至ることを目指す目的で初期の段階の検査としての利用も増えています。

■こどもの頃はどんな性格でしたか?

おとなしくて、ぼーっとしていた思います。授業中でも、別のことを考えてしまうので、気が付くとほかの人と違うページを開いていました。剣道を習っていたので、暑い・寒い・つらいなどのストレス耐性は鍛えられました。

■こどもの頃の夢を教えてください。

小中学生のときに夢はありませんでした。ですので、夢について書く作文は大嫌いでした。算数と理科が得意だったので、科学に関係する仕事に就きたいとは思っていました。高校の時ぐらいから、研究もできる医師になりたいと思うようになりました。

■こどもの頃によく読んでいた本があれば教えてください。

『コペル 21 』という子ども向けの科学雑誌を読んでいました。自然の法則の不思議や変な生物やコンピュータなど、知らないことをもっと知りたいと思っていました。中学生になると、周りは歴史小説などに夢中になるのですが、全く好きになれず、SF小説をよく読んでいました。

仕事をしていてよかったこと、大変だったことを教えてください。

よかったことは、たくさんの人の健康に貢献できることです。赤ちゃんができにくい方に、我々の検査を使ってもらって、その後赤ちゃんができたと聞いたときは本当にうれしくなります。
大変だったことは、実験をしていて何度やってもうまくゆかないときです。特に研究員時代は自分のやり方がまずいのか、誰がやってもできないのかを判別するのは難しく、「できない」と結論を出すときは大変でした。でもごまかさず、出来ないことは出来ないと言えたのは良かったと思います。

■子どもたちにメッセージをお願いします。

いま、将来の夢がなくても大丈夫です。無理に探したり見つけたりするものではなく、何かのきっかけで気づくものだったりします。好きなものや得意なものに打ち込んで、のめり込むと見えてきたりしますので、夢中になれるものを探してみたらどうでしょうか。すでに夢がある人は、それに向かって夢中になりつづけてください。