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アイヌ文化を知ろう~大人のなかま入り~【ニュースがわかるの本棚】

アイヌ文化を知ろう

日本には、「元服(げんぷく)」という主に男子が成人になったことを示す儀式がありました。いまも一部地域に残るという風習です。

アイヌ民族にも、大人になるまでにいくつかの節目となるできごとがあったようです。『アイヌ民族27の昔話』から一部抜粋して、ご紹介したいと思います。

【前回の記事】アイヌ文化を知ろう~秋の祭り~

小学校に入り、高学年になり、中学校に進むことは、少し大人に近づくことでもあります。アイヌ民族のかつての暮らしの中にも、大人になるまでに、いくつかの節目となるできごとがありました。

女の子も男の子も、大人とは髪形が違いました。前髪と耳の前の髪、後ろ髪を残し、ほかは剃(そ)り落とします。女の子は大きくなると肩くらいまでのばして左右に分けました。男の子も同じですが、前の方を少し剃り落としました。

樺太(からふと)では、男の子が小さいうちはビーズで作った「ホㇹチリ」というかざりを前髪にさげました。男の子が成長して、初めて狩りで獲物をとると、成長のお祝いをし、前髪をそります。これで大人と同じ髪形になります。

昔の日本でも、少年のうちは前髪をそらないで、「元服」(げんぷく)という行事の後に剃り落とすのが習慣でした。少し似ていますね。

入れずみは一人前の証(あかし)

女の子は大人になるまでに大切なことが2つあります。
1つは、くちびるのまわりとおでこ、両手に入れずみをすることです。

入れずみの文化は世界のあちこちにあり、本州でも昔はしていたと考えられています。 アイヌの昔話には、「カムイメノコ」(女神)が入れずみをしていたのをまねたのが始まりだという話があります。

絵・小笠原小夜/提供・北海道新聞社

入れずみはきれいなだけでなく、一人前になった証(あかし)です。入れずみをすると、結婚したり、大事な行事に出られるようになりました。 男の人も願いごとをこめ、入れずみをすることがありました。

もう1つ大事なのは、服の下に「ポンクッ」 (小さい帯)やウㇷ゚ソㇿクッ(ふところ帯)とよば れるお守りの帯をすることです。お母さんや母方の女の人がしめてくれます。この帯はお母さんから娘にずっと受けつがれてきた物で、形やしめ方を見れば親戚(しんせき)かどうかがわかります。結婚するときには、この帯を見て親戚ではない人を選びます。

明治時代になると、入れずみなどは禁止され、だんだんなくなっていきました。
しかし昔から大切にされてきたものですから、このごろは自分なりのやり方でこうした文化を取り戻そうとしている人もいます。

紹介した本はコチラ

タイトル:
ミンタㇻ1
アイヌ民族 27の昔話
著者:北原モコットゥナㇱ(編著)
   小笠原小夜(絵)
出版社:北海道新聞社
定価:1,980円

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著者プロフィール

[編著]北原モコットゥナㇱ(きたはら・モコットゥナㇱ

1976年、東京都生まれ。北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授。

[絵]小笠原小夜(おがさわら・さよ)

1973年、小樽市生まれ。イラストレーター。
この本のもととなった新聞連載「ミンタㇻ」のスタート時から、現在までイラストを担当。