「雑草生態学」を専門とする農学博士で、静岡大学農学部教授の稲垣栄洋さんが監修した『ほんとうはびっくりな植物図鑑』から一部を抜粋して、「だれかに話したくなる植物のふしぎ」を全6回にわたってご紹介。
第2回目は「鉄壁ガード編」。ドクダミの独特なにおいには驚くべき効果が!
【前回の記事】だれかに話したくなる植物のふしぎ~びっくりするしかけ編~
ドクダミはにおいでバイ菌を殺す
ドクダミは、半日陰地(はんひかげち)を好む多年草で、庭や空き地などに群生(ぐんせい)しています。
草全体に特有のにおいがあり、葉の裏が紫色になっているのが特徴です。
5~8月に花を咲かせますが、白い花びらに見える部分は花ではなく、本当の花はその中央部分に集まっています。
ドクダミは薬効(やっこう)が高く、内服薬や外用薬として使われています。
においの成分は、白癬菌(はくせんきん)やブドウ球菌を殺すことが出来ます。
毒草だと誤解されることもありますが、ドクダミ自体は毒ではなく、「毒を矯(た)める」(毒を抑えるという意味)からドクダミと呼ばれるようになった、と言われています。
タンポポはかじられると白いネバネバを虫の口につっこむ
タンポポは、道ばたや野原などいたるところに自生しているおなじみの多年草です。春から夏にかけて花を咲かせ、丸い綿毛をつくります。
綿毛には種がついており、風に吹かれると遠くに飛んでいき、広がっていきます。
タンポポの茎はストローのような空洞になっていて、茎や葉を切ると白いネバネバした液がでてきます。この液には、天然ゴムの成分が含まれていて、昆虫にかじられた場合、その口をふさいでそれ以上、食べられるのを防ぐしくみになっています。
また、タンポポには、胃をすこやかにする成分や、おしっこがでやすくなる成分が含まれていて、漢方薬(かんぽうやく)としても使われています。
クスノキは虫が嫌がるショウノウでバリヤーをはる
クスノキは、クスノキ科の常緑高木で、日本で関東地方南部より西から本州の太平洋側、四国、九州、沖縄に広く見られます。
クスノキの木部には、防虫効果のあるショウノウが含まれていて、強い香りがします。
この香りは虫が嫌うので、虫を寄せつけません。
古くから防虫剤や鎮痛剤として、クスノキの葉や燃やした煙が用いられてきました。
かつては、ショウノウを採取するために植林されていましたが、今は合成ショウノウが使われています。
クスノキはお寺や神社の境内などにもよく植えられており、クスノキの大木や「御神木(ごしんぼく)」として、人々の信仰の対象とされているものもあります。
いかがでしたでしょうか。もっと知りたい方は、『ほんとうはびっくりな植物図鑑』でご覧ください。
来週は、植物の不思議な形についてご紹介します。
紹介した本はコチラ
タイトル:
ほんとうはびっくりな植物図鑑
ありふれた草花の秘密がおもしろい!
著者:石井英男(文)稲垣栄洋(監修)
下間文恵(イラスト)
出版社:SBクリエイティブ
定価:1,320円
全国書店等にてお買い求めいただけます
書影をクリックすると本の通販サイト
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著者プロフィール
[監修]稲垣栄洋(いながき ひでひろ)
1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省。静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職。著書に、『生き物の死にざま』(草思社)、『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『弱者の戦略』(新潮社)、『たたかう植物』(筑摩書房)、『面白くて眠れなくなる植物学』(PHP エディターズ・グループ)などがある。
[文]石井英男(いしい ひでお)
1970年大阪府生まれ。東京大学工学部材料学科卒業、東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了。ライター歴30年。高校生の娘と中学生の息子の親として子どもの教育に熱心で、小中学生向けプログラミング書籍も執筆。「CoderDojo 守谷」のメンターとして子どもたちにプログラミングを教えながら、市民農園を数年借りて野菜を育てたこともある。