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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【麻布中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は麻布中学校を紹介します。

授業は教員と生徒との真剣勝負の場 「最終学歴は麻布」という誇りの教育

<3つのポイント>

① 中1の社会「世界」で地球儀を俯瞰する視点を養う

② 高1の「基礎課程修了論文」で思考力を研鑽する

③ 人生の土台となる教養をはぐくむ必修授業「教養総合」

麻布独自の中1社会科目「世界」で歴史・地理・公民の理解が深まる

 港区でもひときわ国際色が豊かな地区に立地する麻布学園。同校は、生徒の教養を培うカリキュラムが充実している。

 例えば、中1の社会科には「世界」という同校オリジナルの科目がある。入学後の生徒はまず、現在の社会状況を大まかに学ぶ。「引きの視点」で世界を俯瞰し、中2からは日本史、世界史、地理、公民といった科目を通じて「寄りの視点」で掘り下げていく。「引き」から「寄り」という手順を踏むことで、生徒は知識と知識が線のようにつながる手ごたえを実感することができる。

 えてして社会科は暗記科目になりがちだが、同校では知識のインプットでは終わらない。生徒はとにかく自らの考えを文章としてアウトプットする機会に恵まれるのだ。高1の年度末には社会的なテーマを設定し「基礎課程修了論文」を執筆する。自ら取材し、参考文献も記した本格的な論文だ。論文執筆に必要な作法は段階を経て習得しているため、大学院レベルの論文もあるといい、優秀な作品は年に1度刊行される校内誌『考える葦』に掲載される。取り扱うテーマは「フェイクニュースの拡散と人間の心理」「キリスト教世界の博物学」など多岐に亘り、生徒は関心のあるテーマをとことん掘り下げる。同校の自由な校風は、生徒たちの思考の広がりを促しているのだ。

生徒たちの心に深く刻まれる高1・2の名物授業「教養総合」

 麻布の名物授業とも言えるのが高1・高2が対象の必修授業「教養総合」だ。語学・人文・科学・芸術・スポーツの5分野とリレー講座があり、古今東西、硬派なテーマからユニークなテーマまで、その種類は70以上にのぼる。中でも、複数の講師が担当するリレー講座は、1つのテーマをさまざまな切り口からアプローチする重厚な内容となっている。例えば「現代医療を考える」という講座では現役の医師らが招かれ、先進医療と切り離すことができない生命倫理の問題についても語るほか、感染症が浮き彫りにした社会課題についても深く掘り下げる。

教養総合授業「日本的な美意識の原点を探ろう」

 社会の第一線で活躍する若手の同校OBが外部講師を務める講座もあり、「キャリア教育」としての効果も生まれている。毎年、教養総合の授業が生徒たちの心に刻むインパクトは大きく、平秀明校長は「知識以上のものを得ている」と語る。世の中のあらゆる問題を学ぶことで生徒たちに新たな問題意識が芽生え、従来の教科の学びがさらに充実する効果をもたらしているという。