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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【多摩大学目黒中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は多摩大学目黒中学校を紹介します。

海外で痛感した日本の教育課題 目的を持って打ち込むことが重要

<3つのポイント>

① 「高大連携」のプログラムで社会の最前線を体験

② 豊かな国際経験を通じて多文化共生への意識を高める

③ 部活動との両立で効率のよい時間の使い方が身につく

世界の教育現場で俯瞰した日本の教育の問題点

 多摩大学目黒の田村嘉浩校長は、経済産業省の元キャリア官僚。在職中にアメリカとロシアの大学に留学をした経験を通じ、ある気づきがあったという。世界から集まった学生は「目標達成のために何を学ぶべきか」という明確なビジョンを持ち、勉強に取り組んでいた。一方、日本からの留学生は、学力や能力の面では決して劣っていないものの、明確な目的意識を持つ学生が少なかった。

 こうした経験から「目的意識を持ち、目標に向かって研鑽を積める生徒を育てる」という教育目標を持つに至る。2004年に同校の校長に就任して以来、そのビジョンは一貫している。

「目的意識」の萌芽の機会は、身近な場面に多くある。勉強、部活動、学校行事など、何か夢中になれるものと巡り合うことで、目標や目的が生まれる。「そのために、学校生活に多くの仕掛けを用意しています」と田村校長は語る。

経産省キャリア官僚として数々の国家政策に関わってきた経験を持つ田村嘉浩校長

高大連携の充実プログラムで「学びの意義」を見いだす

 現在、田村校長は、多摩大学理事長をも務める。同大学は、寺島実郎学長をはじめ、豊かなビジネス経験を持つ教授が多く在籍する。産業界とのつながりが深い多摩大学と連携した同校の多彩なプログラムは、生徒からの人気が高い。国際交流、起業体験、投資戦略、異文化体験、プログラミングなどを研究する大学のゼミに参加し、社会の現状と関わり方を学ぶことができるからだ。

 例えば、投資戦略のゼミでは、高校1年生を中心としたグループが、投資家の視点から女性が活躍する企業の調査を実施し投資。また起業体験ゼミは洋服のリサイクルでSDGs貢献を目指すアプリ構想の可能性を探った。教科の枠を超えたこうした実践的な学習活動は「中学・高校の学びが社会でどういかされるのか」という気づきを促し、基礎的な日常学習への目的意識を刺激するきっかけになっているという。

 こうした活動を報告する12月のアクティブラーニング祭では、生徒たちは教授・社会人院生・大学生の前で研究成果を発表する機会を持つ。「生徒は物怖じせずに堂々と発表しています。プレゼンテーションスキルの向上には目を見張るものがあります」と田村校長は語る。

 国際教育にも力を入れる同校では、韓国の済州島で開催されている各国の元首相たちも集まる世界平和フォーラムに参加する機会がある。生徒たちは例年、一流識者の話に大きな刺激を受けるという。

 と同時に、日韓両国間に横たわる複雑な歴史的背景を学び、融和が一筋縄ではいかないことを知る。しかし、ポップカルチャーや身近な悩みなど、共通の話題を通じて韓国の学生との心理的な距離はあっという間に縮まっていく。個人間の友情を深めること、文化交流を進めることが、平和構築に大きく貢献することを実体験しているのだ。