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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【桐朋中学校編】

居場所を見つけられない生徒も包容する、個を尊重する音楽部

 生徒の自主性を尊重し、選曲、練習、定期演奏会等の運営を全て生徒主導で行う音楽部。現在49名が在籍、吹奏楽部として、毎年11月末の定期演奏会を集大成とし、卒業式・入学式、桐朋祭、野球部の応援演奏のほか、国立フェスティバルに出場する年もある。そのほか音楽室では数人規模のアンサンブル演奏も行い、管打楽器のほかピアノ伴奏も参加するなど自由な音楽活動を行っている。

 現役プロの音楽家でもある顧問の鈴木啓太教諭は、画一的な価値観を排除し、各自の音楽表現活動を追求するため〈外部コンクールには出ない〉〈顧問が音楽的なアドバイスはしない〉を原則としている。中3の郡さんは小1からオーケストラでのホルン演奏経験を持つ本格派だが、体育会系の吹奏楽部ではなく「楽しみながら音楽を続けたかった」と入部の動機を教えてくれた。また、話し合いを大切にし、最高学年の高2は、部の方針や運営方法を丁寧に話し合い、人間関係を構築していく。楽器も基本的に先輩が後輩に指導するが、楽器を〈正しく鳴らす〉のではなく、〈どのようにしたら鳴るか〉を実験、研究するのが伝統だという。

 「最初から力のある優秀な生徒ばかりが集まるわけではなく、むしろ一風変わった価値観を持った生徒が集まりやすい」と鈴木教諭。また学校で居場所を見つけられなかった生徒が入部後、クラスにとけ込み、他部で挫折した生徒が、中途入部し卒業まで在籍するケースも多いという。同部には居場所を見いだせなかった生徒たちをも自然に受け入れるオープンな雰囲気があるようだ。「さまざまな経験をしてきた生徒が集まり、互いの価値観を認め合うことで、多様な価値観が形成される。そのことが演奏にも人間関係にもよい影響を与えている」と鈴木教諭は語る。

 OBの進路もバリエーションに富み、海外大学のほか、東大や医学部進学者も多いという。「日々の活動で何をモチベーションとし、どのような将来像を描くかを考えながら活動するため、自己を確立して飛躍していった生徒が多い」と鈴木教諭。「個性的な部員たちをまとめるのは苦労もある」と笑う部員の井上さんは、法律の歴史を学びたいと法学部を目指す。奥野さんは「運営の経験から人に興味が湧いた」と経営工学専攻を希望している。

 このように桐朋の校風は、それぞれの研究会、同好会、部内でも深く浸透している。中高時代に好きなことに没頭できる環境は、生徒たちの才能を磨くだけでなく、学校内のもう一つの大切な“居場所”としての役割を担っているようだ。(文/松岡理恵)

●学校データ

所在地       〒186-0004 東京都国立市中3-1-10

TEL        042-577-2171

学校公式サイト   https://www.toho.ed.jp/

海外進学支援    

帰国生入試     無

アクセス

国立駅(JR中央線)徒歩15分

谷保駅(JR南武線)徒歩15分

国内外大学合格実績(過去3年間)

東京、京都、東京工業、一橋、北海道、東北、大阪、九州、東京医科歯科、東京外国語、浜松医科、東京都立、防衛医科、慶應義塾、早稲田、上智、アマースト、ウィリアムズ、ハミルトンなど