難民 命をかけた旅

ニュースがわかる2021年10月号より

 紛争や迫害などによって故郷を追われる人たちが、世界で増え続けています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が6月に発表した報告書によると、2020年末で8240万人に上り、戦後最大規模となっています。安住の地を求めて国境を越える人たちの中には、日本を目指す人もいます。内戦が続くシリアを12歳で離れ、今日本で暮らす男性の話を入り口に、難民について考えてみましょう。

シリア難民留学生アブダッラさんのきた道

2011年3月、日本で東日本大震災が起きたころ、中東・シリアで内戦が始まりました。反政府デモを政府軍が激しく弾圧し、内戦へと発展したのです。両親と弟と暮らすアブダッラさんは、いつかコンピューターに関わる仕事がしたいと夢見て学校に通っていました。しかし、「勉強ができなくなって、明日生きられるかどうかを考えるようになった。ある瞬間に普通の生活が、全部変わってしまった」といいます。

シリアからイエメン、サウジアラビアへ

 内戦が始まったシリアでは、子どもも危険にさらされ、授業が終わっても何時間も待たないと家に帰れなかったり、何カ月も休校になったりすることもありました。アブダッラさん一家は内戦から逃れるため、イエメンに移りました。イエメンでは爆撃音を聞くこともなく、学校にも通えました。しかし、ほどなくイエメンでも内戦が始まり、難民を受け入れていた隣国サウジアラビアに再び逃れました。両親は移動に多くのお金を使い、何度も仕事を探さねばなりませんでした。サウジアラビアで、アブダッラさんは高校生になりました。「自分のこれからを考えられなくなって、1年くらい友達もできませんでした」

トルコから日本を目指す

サウジアラビアの平和な環境の中で、アブダッラさんはだんだんと元気をとり戻し、高校を卒業するころには「IT(情報技術)が進んでいる日本で勉強したい」という希望を持つようになりました。音楽で聞く日本語の響きや、アニメ「進撃の巨人」も日本への興味をかき立てました。でも、日本への入国に必要なビザ(査証)をとるのはとても難しく、サウジアラビアでの進学も困難でした。そこで、言語が違うトルコに渡り大学に入学。在学中に日本で勉強できる奨学制度を探して応募し、選考を通り19歳で来日を果たしました。(編集部)

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