【ニュースがわかる2024年11月号】巻頭特集は世界が注目! アメリカ大統領選

学ぼう、台風の仕組み【ニュース知りたいんジャー】

本格的な台風シーズンです。台風は昔から特別な大気現象として恐れられてきました。

台風はどこで発生してどのぐらい日本に来るのでしょう? 台風や地球温暖化との関係についても研究している気象庁の気象研究所主任研究官の山口宗彦さんに聞きました。【木谷朋子】


 ◇台風の名前


 台風にはその年の発生順に番号が付けられています。最初の台風が1号となり、天気図などでは、西暦の下2ケタも加えて、2019年の最初の台風なら、1901号と表します。番号以外だと、アジア各国から募った動物や植物などの名前が付けられ、日本からは「テンビン」や「ヤギ」「ウサギ」などの星座の名前が登録されています。ハリケーンやサイクロンは「ハリケーン・アンドリュー」のように、名前を付けて呼ぶのが一般的です。アメリカでは人名が使われ、アルファベット順に、男性と女性の名前が交互になるように命名されます。


 ◇どこでできるの?


 地上の大気には、常に気圧差があります。気圧の高いところを「高気圧」、気圧の低いところを「低気圧」と呼びますが、私たちがふだん「低気圧」と呼んでいるのは「温帯低気圧」のことです。そして、より温暖な熱帯や亜熱帯の海洋上で発生する低気圧のことは「熱帯低気圧」と呼びます。この熱帯低気圧が、赤道から北緯60度の間、東経100度から180度の間の領域(北西太平洋域)にあり、最大風速が17・2㍍以上になったものが「台風」です。
 「ハリケーン」や「サイクロン」も、台風と同じ熱帯低気圧ですが、発生する場所で呼び方が違います。北東太平洋域や北大西洋域で発生し、熱帯低気圧の中で勢力が強いものを「ハリケーン」、インド洋や南太平洋域で発生するものを「サイクロン」と呼びます。
 世界では台風やハリケーン、サイクロンが1年間に80~90個ほど発生します。多くは、北太平洋、南太平洋西部、南北インド洋、北大西洋などで発生していて、約3割が日本のある北西太平洋に集中しています。


 ◇どうやってできるの?

 台風の発生する場所は、赤道近くの熱帯の海の上です。海水温が高いため水蒸気ができやすく、温められた水蒸気は周りの空気より軽いため、上昇していきます。上空で冷やされた水蒸気は雲になり、背の高い積乱雲ができます。「台風のたまご」は、大きな積乱雲のかたまりから生まれます。
 いくつかの条件が重なると、この雲のかたまりが渦を巻くようになり、周囲に大気の流れが生まれて熱帯低気圧や台風となります。台風は移動しながら水蒸気をエネルギー源とし、大気の流れを強めて発達していきます。水温の低い海や陸上に来ると水蒸気が少なくなるため、だんだんと勢力を弱めていきます。
 台風の大きさは半径1000㌔㍍を超える大きなものもありますが、平均的には半径300~400㌔㍍ぐらいです。台風の勢力は大きさと強さ最大風速)で表します。


 ◇台風被害にはどんなものがあるの?

 台風がもたらす主な災害は、「強風」「豪雨」「高潮」「潮風害」の四つです。最近は、豪雨による土砂災害や川の氾濫(あふれること)などが目立ちます。都市部では交通網がまひしたり、農村部では農作物が被害にあったりしています。
 台風は強風や大雨だけでなく、1959年の伊勢湾台風のように、5000人以上の死者や行方不明者の7割が高潮による被害という例もあります。高潮とは、台風による気圧の低下や強風によって潮位(海面の高さ)が異常に上がる現象です。
 また、潮風害のように、海上の塩を含んだ波のしぶきが、台風の強風で陸のさまざまな物に付き、農作物や樹木が枯れたり、電気設備が故障・停電したりする被害もあります。

 ◇地球温暖化とは関係あるの?


 今年8月に発表された「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次報告書では、台風などの熱帯低気圧は過去40年でより強いものの割合が高くなり、台風による降水量も温暖化で増えているといいます。
 また、温暖化が進むと台風の移動速度が遅くなることが、山口さんたちの研究で予測されています。速度が遅くなると台風の影響を受ける時間が長くなり、降水量の増加などによる被害の拡大につながります。
 温暖化が進むと、台風による雨はより強くなることが多くの研究で示されています。一方「温暖化すると世界で発生する熱帯低気圧の数は増えるか?」という問いには、世界の研究者の間でも意見が分かれています。温暖化の研究は途上にあり、今後も研究が必要です。


 ◇日本にはどのぐらい上陸するの?

 日本で台風が多いのは7~10月です。台風は平均で年間25個発生します。そのうち平均11個が日本に接近し、平均3個が日本に上陸します。
 上陸とは、台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を言います。小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出る場合は「通過」です。そのため、台風の通り道となる沖縄では通過となり、上陸数が多い都道府県には入っていないのです。
 台風の発生数は年によって違います。1967年のように39個も発生する年もあれば、2010年のように14個しか発生しない年もあります。上陸数も04年のように10個の年もあれば、08年や20年のようにひとつも上陸しない年もあります。(2021年09月22日掲載毎日小学生新聞より)