2011年3月11日に起き、今年で15年を迎える東日本大震災では、死者約2万人の9割以上が津波による溺死でした。事前に避難できれば命を守れるはずです。津波の警報が震災当時からどう変わったのか、知りたいんジャーと調べてみましょう。
過小評価の苦い教訓
東日本大震災での津波警報には、いくつか教訓が見つかりました。
一つは、地震の規模を過小評価(本来の規模より小さく評価)してしまったことです。地震の規模は、マグニチュード(M)で表し、数字が大きいほど大きな地震になります。東日本大震災はM9.0という超巨大地震で、観測が始まって以降では日本最大の地震でした。ところが、当時の技術的な限界もあって、気象庁は地震発生の午後2時46分から3分後、Mを実際の規模よりも小さくM7.9と推定して情報を発表しました。適切な地震の規模を迅速に求めることができなかったのです。
地震の規模だけではありません。地震に伴い発生する津波の高さの予測は、推定された地震の規模に基づいて計算されるため、実際には最大で高さ16.7メートルもの津波が襲った岩手県沿岸には当初、予想される津波の高さは3メートルと発表されました。これが避難の遅れにつながったのです。
最大地震を想定
津波の高さなどの情報は、地震が起きた場所(震源)やマグニチュード(M)で示される規模を基に予測します。ところが東日本大震災のようにM8を上回る巨大地震の場合、地震が引き起こしている断層の破壊が3分以上続くので、津波警報を出す目標にしている地震発生後3分以内では、地震の規模を正しく推定できません。
当初の推定M7.9を上回るM9.0だと分かったのは、地震発生から2日後でした。Mの値が1.1違うだけで、約45倍もエネルギーの大きな地震となるのです。
そこで気象庁は、地震の発生直後、M8以上の巨大地震の可能性がある場合には、正確なマグニチュードに関係なく、震源の近くで起こりうる最大の地震が発生したと想定し、津波警報を出す方式に変えました。
数値より言葉で
正確なマグニチュード(M)が分からなくても、危機感をもって迅速に避難してもらうため、気象庁は状況に応じて警報の表現も変えることにしました。
東日本大震災が起きるまでの津波警報は、事前に津波をシミュレーション(仮想による予測)した結果をまとめた詳しいデータベースを基に、発生した地震の震源とマグニチュードから「予測される津波の高さは5メートル」などと数値を挙げ、具体的に津波の大きさをイメージできる形で出してきました。
しかし、巨大地震の正確なマグニチュードは地震発生直後には分からないため、適切に津波の高さを示すことはできません。そこで、M8以上の巨大地震の場合、気象庁は予想される津波の高さを「巨大」あるいは「高い」と言葉で表現した津波警報や津波情報を発表し、避難を促すことにしたのです。その後、地震のマグニチュードが分かったら、数値での発表に切り替えます。
海底観測網の活用
津波を監視し、観測情報を速やかに発表するためには、海域の観測点の活用が効果的です。そこで政府は、東日本大震災をきっかけに、東北地方の沖合に海底地震津波観測網を整備しました。太平洋側の関東から北海道の沖合にかけた150地点で、地震計や津波計(水圧の変化を記録する水圧計)などを収めた観測装置を海底に設置し、それらをケーブルでつなぐことで24時間いつでも揺れなどのデータが入ってくる体制になりました。
また、南海トラフ(トラフは海底のくぼ地)地震にも備え、静岡県沖から紀伊半島沖、四国南部沖、九州南東部沖にかけた海域の海底にも設置されています。太平洋側に設置したのは、プレートと呼ばれる海底の岩板が沈み込み、巨大地震が起きる可能性の高い地域だからです。
主な海底観測網を運用する国立研究開発法人・防災科学技術研究所(茨城県つくば市)によると、これらの海底観測網により、地震を最大30秒、津波を最大20分早く検知できるようになりました。
携帯電話にも通知
津波警報の内容を工夫し、海底観測網を活用して早く正確な情報を伝えようとしても、避難が必要な住民に情報が届かなければ意味がありません。東日本大震災の時には、その後の聞き取り調査で、テレビなどを見て津波警報を知っていた人が少なかったことが分かりました。
現在では新聞、テレビ、ラジオなどの報道機関による周知はもちろん、ほとんどの大人が持つようになった携帯電話へ一斉に警報通知を送ったり、地域のスピーカーから放送が流れる防災行政無線を分かりやすく聞き取れるよう改善したりするなど、警報を伝える手段にも目配りしています。
それでも、皆さんが気にしなかったら、大事な情報も頭を素通りしてしまうかもしれません。いざという時のため、日ごろから地震、津波、大雨大雪、洪水などの災害に関心を抱き、避難の仕方などについて考えておく必要がありそうです。
(2026年2月11日毎日小学生新聞より)
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津波警報、どのように変わったの?【ニュース知りたいんジャー】
https://www.newsgawakaru.com/news/260211