「地域猫」という言葉を聞いたことがありますか? 飼い猫でもなく、野良猫でもない地域で見守る猫のことです。どんな猫なのか、知りたいんジャーと一緒に調べてみましょう。
なぜ飼い猫ではない猫を、地域で見守る必要があるのでしょうか。実は、猫の繁殖力はとても強いのです。
メス猫は生後4~12か月で出産できるようになります。1回の出産で1~8匹ほどの子猫を産み、年2~3回の出産が可能です。オス猫と交尾することにより、1匹のメス猫から1年後に20匹以上、2年後に80匹以上に増えることができるという試算があるほどです。
野良猫を放置しておくと、たくさんの猫がごみをあさったり、人の住む家や利用する場所をトイレにして悪臭を発生させたりするなど、人間の生活が脅かされてしまいます。また、それを防ぐため猫が捕獲されて引き取り手がいないと、殺処分されてしまいます。人間の住む地域の環境と、猫の命の両方を守るために、見守る必要があるのです。

アパート裏で、カラスよけの傘の下に置かれた餌を食べる地域猫たち
放っておくと増えすぎてしまう街の野良猫に対しては、まず繁殖力を抑えます。餌やりを続けて観察し、捕まえて動物病院に連れて行き、メス猫に対しては不妊手術を、オス猫に対しては去勢手術を行い、子どもをつくれないようにします。その後は地域に戻します。
こうした取り組みは、trap(トラップ=捕獲)、neuter(ニューター=不妊・去勢手術)、return(リターン=元の場所に戻す)の頭文字をとってTNR活動と呼ばれます。ただ、これだけでは野良猫に戻って街の人たちに迷惑をかけてしまうことがあるので、餌をやり、トイレを用意したり掃除してあげたりして地域で管理します。そうやって地域の人たちに見守られた、いわば地域の飼い猫が地域猫なのです。
不妊・去勢手術を終え、地域に戻ってきた猫たちには、ある特徴があります。片方の耳の先がV字形に切り取られているのです。メスは左耳、オスは右耳の先が切り取られます。桜の花びらのように見えることから、V字形に切り取られた耳をサクラ耳と呼んだり、サクラ耳を持つ猫をサクラネコと呼んだりすることもあります。
耳を切り取るのはかわいそうと思われるかもしれません。でも、手術を受けていない野良猫と勘違いされ、動物愛護センターなどに持ち込まれて殺処分される心配がなくなるので、とても大事なことです。獣医師によると、不妊・去勢手術を受ける際に一緒に麻酔をするので、手術中も、その後も痛みはないそうです。
サクラネコの中には、TNR活動だけで街に戻ってきた猫もいるので、地域猫となるには地域の協力が欠かせません。

左耳がV字形のサクラ耳のメスの地域猫・サビ
街の環境を損なわないようにするため、餌やりやトイレの管理を通じて地域猫を世話するのは、市民のボランティア(自発的に無償で行う活動や人のこと)です。また、自治体(地域の役所・役場)によってはTNRや地域猫活動に必要な費用などを助成し、市民の活動を支援したり連携したりしています。
行政と連携してボランティアと地域住民との橋渡しをしたり、地域猫についての取り組み方を伝えたりするNPO法人などの市民団体も、重要な役割を果たします。
例えば、東京都豊島区のNPO法人「東京キャッツアイ」は、決まった時間と場所で地域猫に餌をやり、猫がトイレにしている場所を掃除しています。また、同足立区のNPO法人「あだち動物共生ネットワーク」では、「餌やりさん」として活動するボランティアと連絡をとりあって地域猫活動を支援するなど、さまざまな団体が地域の実情に応じた活動をしています。

東京キャッツアイのスタッフに見守られ、キャットフードを食べる地域猫・サビ
環境省によると、地域猫の活動は神奈川県横浜市磯子区で始まりました。磯子区は1999年、野良猫の被害に悩む人たちと猫を守りたいと考える人たちが知恵を出し合い、人と猫が共生する地域猫の考え方を取り入れた飼育ガイドラインを作成しました。その取り組みが全国各地に広まっていったのです。
こうした取り組みの成果もあって、引き取り手がないなどの理由で殺処分された全国の猫の数は、2006年度の22万8373匹から一貫して減り続け、2023年度には6899匹になりました。多くのボランティアが行政と連携して地域猫活動を続けてきた東京都台東区では、野良猫が地域猫となって寿命を全うし、街中で猫を見かけなくなったほどだと区の担当者はいいます。
地域猫活動について環境省動物愛護管理室の担当者は「猫のことを苦手だと思う人の理解も得ることが大切です」と話し、地域全体で協力していくことの重要性を強調しました。
(2025年12月17日毎日小学生新聞より)
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