今年も6日から13日にかけて、六つの分野でノーベル賞が発表されます。「世界で最も権威ある賞」として、人類に最大の貢献をもたらした人々に贈られる賞です。そこで、どんな賞で、どうやって選ばれるのかを、知りたいんジャーが調べました。
ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で大金持ちになったスウェーデンの発明家で実業家、アルフレッド・ノーベル(1833~96年)の遺言によって、1901年に始まりました。現在、六つの賞があります。物理学、化学、生理学・医学、文学、平和のほか、68年には、スウェーデン国立銀行の呼びかけで経済学賞ができました。
毎年10月前半に発表され、授賞式はノーベルの命日(亡くなった日)の12月10日に、スウェーデンの首都ストックホルムで開かれます。平和賞の授賞式だけは、ノルウェーの首都オスロで行われます。各賞とも最大3人まで受賞でき、受賞者には、約1000万スウェーデン(1億円以上)の賞金と賞状、メダルが授与されます。受賞者は3人までなので、2~3人いるときは、賞金は分けられます。
受賞者は授賞式前にストックホルムのノーベル博物館を訪れ、館内のカフェの椅子の裏にサインするのも恒例行事です。式の後には、王族と席をともにする晩さん会に出席します。
今年は6日に生理学・医学賞、7日に物理学賞、8日に化学賞、9日に文学賞、10日に平和賞、13日に経済学賞が発表されます。

ノーベル博物館の椅子に書かれた物理学賞受賞者のサイン(中村修二さん、天野浩さん、赤崎勇さん)=ストックホルムで2014年12月9日
幼い頃から化学の世界にのめり込んでいたノーベルは、大人になると化学者・発明家になりました。その生涯で、ダイナマイトのほか350以上の特許を取得しています。特に爆薬の研究に熱心に取り組み、1866年、ダイナマイトを発明します。
ダイナマイトは、戦争で使われると「死の兵器」として恐れられましたが、最初は建設現場や鉱山開発などで爆発物として利用され、工事を安全に早く進めるための道具でした。
ノーベルは、ダイナマイトが自分の発明の目的とは異なる「死の兵器」になってしまったことを悔やんだといわれています。発明で得たたくさんのお金を「人類に最大の恩恵をもたらした人に、賞の形で毎年分配すること」という遺言を残しました。「国籍を問わず、最も賞にふさわしい人を選ぶのが私の願い」とも書き残しています。
ノーベルの遺産は約3300万スウェーデンで、現在の300億円以上になります。遺産はノーベル財団が管理して運用し、ノーベル賞の賞金にあてています。
受賞の条件は、受賞が決まった発表の時点で受賞者が生きていることとされています。
受賞候補者を選ぶ機関も、ノーベルの遺言によって決まっています。物理学賞と化学賞、経済学賞は「スウェーデン王立科学アカデミー」、生理学・医学賞は「カロリンスカ研究所」、文学賞は「スウェーデン・アカデミー」、平和賞はノルウェーの国会が任命した議会の5人で作る「ノルウェー・ノーベル賞委員会」が選びます。
それぞれの機関は、前年の9月に過去の受賞者を含む多くの研究者らに候補者の推薦を頼みます。そして、専門家の意見を聞きながら約1年かけて、候補者の中から受賞者を決めます。候補者が誰かなどの情報は、秘密にされています。推薦された人の名前や選考過程などの詳しい情報は、選考から50年間は公表されないことが決まっているためです。
ノーベル財団の資料によると、ノーベル賞は1901年から2024年まで、1012の個人と団体に授与されました。中には複数回受賞した人もいるため、合計976人の個人と28の団体が受賞しています。このうち女性は66人です。
最初のノーベル賞受賞者の一人は、目に見えない放射線の一つ「エックス線」を発見したドイツのウィルヘルム・レントゲンです(物理学賞)。エックス線は現在も、病院でのレントゲン撮影や、空港の手荷物検査、宇宙の研究などで幅広く使われています。
ノーベル賞を受賞した最初の女性はマリー・キュリーで、1903年、放射線の研究で、夫のピエール・キュリーとアンリ・ベクレルとともに物理学賞を受賞しました。その後、11年には放射性物質ラジウムの発見などで化学賞を受賞。彼女の娘イレーヌ・ジョリオ・キュリーも35年に化学賞を受賞しています。
イギリスのフレミングは、20世紀最大の発見とされている抗生物質のペニシリンを開発し、45年に生理学・医学賞を受賞しています。昨年は、韓国の作家・韓江さんがノーベル文学賞を受賞し、アジア人女性として初めてノーベル賞を受賞したと話題になりました。
日本の受賞者は、アメリカ国籍の3人を含め28人と1団体です。これまでに物理学賞12人、化学賞8人、生理学・医学賞5人、文学賞2人、平和賞は1人と1団体が受賞しています。経済学賞の受賞者と女性の受賞者は、まだいません。
初めての受賞は、1949年の湯川秀樹博士の物理学賞でした。日本からの受賞者が増えたのは2000年以降です。特に物理学や化学での受賞者が多くみられました。
近年は、さまざまな体の組織になる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥さん、家畜の感染症治療薬開発に貢献した大村智さん、免疫の仕組みを使ったがん治療への道を開いた本庶佑さんなど、生理学・医学賞の受賞が相次ぎました。

ノーベル賞授賞式で、生理学・医学賞のメダルと証書を受け取り、聴衆から拍手を受ける山中伸弥さん=スウェーデン・ストックホルムで2012年12月10日(代表撮影)
また、スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池を開発した吉野彰さん(化学賞)や、地球温暖化の予測・解明に貢献した真鍋淑郎さん(物理学賞)など、現代に必要とされる分野で功績をあげた人が目立ちます。
昨年は、原子爆弾の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が平和賞を受賞し、大きな話題を呼びました。
(2025年10月1日毎日小学生新聞より)

ノーベル平和賞の授賞式で演説する日本被団協の田中熙巳さん=ノルウェー・オスロで2024年12月10日
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