2025年 重大ニュース【月刊ニュースがわかる12月号】

ハザードマップでリスクや災害に備える【ニュース知りたいんジャー】

大雨おおあめ台風たいふう土砂災害どしゃさいがいなど、日本にっぽん各地かくちでいろいろな自然災害しぜんさいがいきています。みなさんがんでいる地域ちいきには、それぞれの災害さいがいで、どのような被害ひがいきるリスク(危険性きけんせい)があるのでしょうか? そのために役立やくだつのが「ハザードマップ」です。被害ひがい想定そうていり、そなえるためにできることを、りたいんジャーと一緒いっしょ調しらべてみました。

 ハザードマップって?

 梅雨つゆ時期じきからあきにかけて、日本列島にほんれっとうでは集中豪雨しゅうちゅうごうう台風たいふうつづきます。大雨おおあめ河川かせんみずりょう急激きゅうげきえ、堤防ていぼうえてあふれる「洪水こうずい」や、台風たいふうつよ低気圧ていきあつ接近せっきん海面かいめん上昇じょうしょうし、海水かいすい堤防ていぼうなどをえて浸水しんすいする「高潮たかしお」の被害ひがいきます。あめつづき、やまやがけの地盤じばんゆるんで、がけくずれや土砂災害どしゃさいがい発生はっせいすることもあります。

 こうした自然災害しぜんさいがいは、あめつづくなどの気象きしょう条件じょうけんくわえて、その土地とちちによる性質せいしつ地形ちけいなど、さまざまな要素ようそかさなってきます。そこで住民じゅうみんに、予測よそくされる被害ひがいって被害ひがいかるくしたり防災ぼうさい役立やくだてたりしてもらうためにつくられたものが「ハザードマップ」です。被害ひがい予測よそくともばれます。

 ハザードマップは洪水こうずい土砂災害どしゃさいがい地震じしんなど災害さいがいごとにつくられています。災害時さいがいじ危険きけん場所ばしょをはじめ、避難ひなんする道順みちじゅん避難場所ひなんばしょ地図ちずじょうしめしています。市区町村しくちょうそん作成さくせいしており、冊子さっしやホームページでることができます。

台風18号の影響による大雨で鬼怒川(写真の上から下へ向かって流れる川)の堤防が決壊して水があふれ、冠水した茨城県常総市=2015年9月10日、毎日新聞社ヘリから

 どうればいいの?

 水害すいがい対策たいさくちかられる東京都江戸川区とうきょうとえどがわくれい記者きしゃ取材しゅざいしました。江戸川区えどがわくは、うみ満潮まんちょう水面すいめんよりも地面じめんほうひくい「海抜かいばつゼロメートル地帯ちたい」が区域くいきの7わりめます。荒川あらかわ江戸川えどがわながれ、上流じょうりゅうったあめおおあつまります。

 水害すいがいハザードマップは、洪水こうずい高潮たかしおによる浸水しんすい被害ひがいわせてしめしています。ふかさが0.5メートル未満みまんの「床下ゆかした浸水しんすい」はたまご黄身きみいろ、▽3メートル未満みまん建物たてものの「1かい浸水しんすい」はうすいオレンジいろ、▽5メートル未満みまんの「2かい浸水しんすい」はピンク、▽10メートル未満みまんの「3~4かい浸水しんすい」はいピンク――と色分いろわけしています。

 区役所くやくしょのある場所ばしょはどうなるのでしょうか? マップをると、5メートル未満みまんしめすピンクです。防災ぼうさい危機管理ききかんり功刀くぬぎ彰史あきふみさんは「最大さいだい被害ひがい場合ばあいかいまで浸水しんすいし、2週間しゅうかん以上いじょうみずがひきません。区内くないのほとんどが水没すいぼつします」ときびしい表情ひょうじょういました。近隣きんりんの5人口じんこうの9わり以上いじょうにあたる250万人まんにん被災ひさいする可能性かのうせいがあるそうです。

東京都江戸川区の水害ハザードマップについて説明する区防災危機管理課の職員=江戸川区役所で6月23日

 どこに避難ひなんすればいいの?

 各地かくち被害想定ひがいそうているには、市区町村しくちょうそんつくるハザードマップのほか、国土交通省こくどこうつうしょうの「かさねるハザードマップ」も活用かつようできます。これは、さまざまな種類しゅるい災害さいがい被害想定ひがいそうていを、各地かくち地図ちずじょうかさねてることができるものです。

 いえ学校がっこう被害想定ひがいそうていかったあとは、避難所ひなんじょ確認かくにんします。どのみちとおって避難ひなんするのか、できればふた以上いじょうのルートを確保かくほしましょう。水害すいがいでは、周辺しゅうへんよりもひくくなっている「アンダーパス」の道路どうろとおることはけましょう。

 非常持ひじょうもぶくろ準備じゅんびしましょう。避難ひなんするタイミングも、事前じぜんめておくといいです。高齢者こうれいしゃなど行動こうどう時間じかんがかかるひとがいる家庭かていは、はやめに避難ひなんするのがのぞましいです。

 大雨おおあめ台風たいふう予報よほうたら、気象情報きしょうじょうほう入手にゅうしゅしましょう。気象庁きしょうちょう自治体じちたいのサイトをはじめ、ニュースやラジオで確認かくにんできます。防災ぼうさい行政ぎょうせい無線むせんにも注意ちゅういしましょう。

 「浸水しんすいしない場所ばしょへ、大雨おおあめになるまえ避難ひなんする」。それが水害すいがい対応たいおうだい原則げんそくです。もし、きゅう大雨おおあめなどで避難所ひなんじょへの移動いどうむずかしい場合ばあいには、よりたかいところへく「垂直すいちょく避難ひなん」をして、できるだけ安全あんぜん確保かくほします。

 みんながることができるように

 地域ちいきらすだれにでも、必要ひつよう情報じょうほうとどくように、努力どりょくしている自治体じちたいもあります。

 日本にっぽんらす外国がいこくにルーツのあるひとえ、そう人口じんこうやく3%にあたります。外国人がいこくじんおお自治体じちたいでは、英語えいご中国語ちゅうごくごなど複数ふくすう言語げんごでハザードマップを作成さくせいするところもあります。

 東京都大田区とうきょうとおおたくは、むずかしいことばをえたり漢字かんじにふりがなをつけたりした「やさしい日本語にほんご」によるマップもつくっています。

 ハザードマップは、説明せつめい文章ぶんしょうかれ、被害想定ひがいそうていいろけてしめされ、おおいです。このため視覚障害者しかくしょうがいしゃんだり、たりするのはむずかしいです。そこで、以下いかのようなこころみがなされています。

 ▽避難場所ひなんばしょなどを点字てんじやくす、▽アプリで二次元にじげんコードをると、文字もじかれた内容ないようげてくれる「音声おんせいコード」をかくページにつける、▽さわってかる立体りったいてき地図ちずつくる。手話しゅわ動画どうがサイトにアクセスできるQRコードをつけたところもあります。これらは、まだごく一部いちぶ自治体じちたいでのみですが、ぜひひろがってほしいです。

地域ちいきにあるヒント

 過去かこきた災害さいがいるヒントが地域ちいきにある場合ばあいがあります。「自然災害しぜんさいがい伝承でんしょう」とばれる石碑せきひなどもそのひとつです。

 たとえば、東京都江東区木場とうきょうとこうとうくきばには、有形文化財ゆうけいぶんかざいにも指定していされている「波除なみよけ」があります。資料しりょうなどによると、江戸時代えどじだい後期こうきにあった大雨おおあめ高潮たかしおによる水害すいがいで、あたり一帯いったいいえながされ、おおくの死者ししゃたそうです。

 また、各地かくち地名ちめいには、地形ちけい特徴とくちょうとらえてがれてきたものもあります。たとえば、くらくらというふくまれる地名ちめいは、がけ崩壊ほうかいしめしている場合ばあいもあり、かたおなべつ漢字かんじ使つかわれていることもあるそうです。

 地域ちいき防災ぼうさいにくわしい国立研究開発法人こくりつけんきゅうかいはつほうじん防災科学技術研究所ぼうさいかがくぎじゅつけんきゅうしょ茨城県いばらきけんつくば)のもと客員研究員きゃくいんけんきゅういん花崎はなざき哲司さとしさんは、こうはなします。「『へび』や『りゅう』といった漢字かんじはいった地名ちめいには、過去かこ水害すいがい土砂崩どしゃくずれがあった場合ばあいがあります。市町村合併しちょうそんがっぺいなどでわっても、駅名えきめいなどでのこっているところもあります。地域ちいき特徴とくちょうかるかもしれませんよ」

(2025ねんがつ9日ここのか 毎日小学生新聞まいにちしょうがくせいしんぶんより)

江戸時代後期の水害を伝える「波除碑」=東京都江東区木場で6月17日

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