4月13日に2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が始まりました。開催場所は大阪市の海にある人工の島「夢洲」で、10月13日までの184日間行われます。日本での万博は今回で6回目。万博がいつどこで始まったのか、その歴史をたどってみました。
「万国博覧会」を略した言葉です。博覧会は、国の産業や科学技術、芸術文化の発展のために、名産品や見本などを展示する会のこと。複数の国が参加して開催される博覧会を「万国博覧会」と呼びます。
近代の博覧会の原形は、ヨーロッパの各都市で開かれていた、市場のような「市」が始まりです。1475年にフランスのルイ11世がイギリスの首都ロンドンで開催した「フランス物産展」がきっかけといわれます。
イギリスやフランスでは、しばしばこのような物産展が開かれていました。やがてこの催しは、複数の国が参加して開催される近代万博につながっていきます。
それぞれの国が、博覧会での展示品を通して、国力や存在をアピールする場になっていきました。

1851年に開催された第1回ロンドン万博のメイン会場「クリスタルパレス(水晶宮)」
19世紀後半、初期の万博の中心だったのは、イギリスとフランスでした。1851年にイギリス・ロンドンの公園「ハイドパーク」で開かれた大博覧会が、近代万博の最初とされています。
正式名称は「第1回ロンドン万国博覧会」。鉄骨と巨大ガラスで造られたクリスタルパレス(水晶宮)をメイン会場に、34か国が参加して開かれました。観客約600万人が詰めかけ、大成功をおさめました。
一方、日本が最初に万博とかかわったのは62年の「第2回ロンドン万博」でした。当時、世界の列強国から開国を迫られていた徳川幕府は、不安定な政治状況の中でヨーロッパへ遣欧使節団を派遣していました。後に慶応義塾大学の創始者となる福沢諭吉も通訳として同行し、ロンドン万博を訪れました。帰国後に「西洋事情」という著書で、ヨーロッパ社会の華やかさと技術力の高さに驚いたことなど、細かく書きしるしました。英語からの翻訳で「万国博覧会」という言葉にしたのも福沢です。
1867年のパリ万博(フランス)です。皇帝ナポレオン3世から招待を受けた第十五代将軍・徳川慶喜は、14歳の弟・昭武を代表にして、家臣数人と留学生などを同行させました。
徳川幕府のほか、薩摩藩(現在の鹿児島県)、佐賀藩(現在の佐賀県)が参加していたことから、諸外国は、徳川幕府が政権としての力を失っていることを感じていたとみられます。
一方、多くの国が日本の浮世絵や工芸品を見て、日本の芸術力や文化のレベルの高さに驚いたといいます。特に安藤広重や葛飾北斎などの浮世絵は、ゴッホやモネなどヨーロッパの印象派と呼ばれた画家たちに大きな影響を与えました。
正式に日本政府として参加したのは、明治政府となった73(明治6)年のオーストリアで行われたウィーン万博からです。日本からは日本館や日本庭園を造るため、大工や職人を連れていきました。国宝級の美術品や絹織物などが並び、日本文化や芸術への関心が高まったことで、「ジャポニズム(日本主義)」に影響を受けた美術作品が次々とヨーロッパで、もてはやされるきっかけとなりました。

1867年に開催されたパリ万国博覧会を訪れた徳川幕府の使節団。中央に徳川昭武、後列左端には、後に実業家となる渋沢栄一がいます
万博は「国際博覧会」ともいいます。現在のように、万博が世界共通のさまざまな目的(テーマ)を発表・発信する場となったのは、「国際博覧会条約(BIE条約)」に基づき、フランスの首都パリに本部を置く「博覧会国際事務局(BIE)」という国際機関が設立された1928年からです。
BIEの承認の下、現在は181の国・地域が加盟し、投票によって開催国が決まります。BIEは「万博は、公衆(一般の人たち)に知識や技術を教育する場」としています。
BIE発足後初めての万博は33年のシカゴ万博(アメリカ)でした。当時のテーマは「進歩の世紀」。それ以降、BIEはテーマに沿った万博を開催しています。今年の大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
日本は国際博覧会条約(BIE条約)に1965年に加盟しました。そして70年、大阪府吹田市で日本初、アジア初の万博が開かれます。正式名は「日本万国博覧会」、略称はEXPO(エキスポ)70’です。
お祭り広場の中心に建つ「太陽の塔」は、万博のシンボルとなり、中でも、アメリカの宇宙船アポロ12号が月から持ち帰った「月の石」が展示されたアメリカ館には、毎日長い行列ができました。
会場には183日間で約6421万人が訪れ、2010年の中国・上海万博(約7309万人)に抜かれるまで万博史上最多でした。
これまで日本で開催された万博は計5回です。70年大阪万博の後、75年に沖縄海洋博(沖縄県)、85年につくば科学万博(茨城県)、90年に花の万博(大阪府)、2005年に愛・地球博(愛知県)が開かれました。今回の25年日本国際博覧会(大阪・関西万博の正式名)で、6回目となります。
なお、次回30年の万博は、リヤド(サウジアラビア)での開催が決まっています。

70年の大阪万博のアメリカ館で公開された「月の石」
(2025年4月16日 毎日小学生新聞より)
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