ここでは、主に野菜や果物のパッケージを科学的に見てみましょう。日本の4年制の大学では唯一、食品包装学の研究室を持つ日本女子大学(東京都文京区)の北沢裕明さんに教えてもらいます。(「Newsがわかる2025年1月号」より)
青果物(野菜や果物)のパッケージの役割は、大きく分けて二つあります。一つは、水分が抜けるなどの科学的な変化の防止。もう一つは、青果物の損傷を防ぐことです。
例えば葉もの野菜は、主にポリプロピレンというプラスチックフィルムに包んで販売されています。このフィルムは、野菜の水分の抜けや呼吸(酸素をすって二酸化炭素をはく)を調整して、おいしさを保っているのです。果物などは傷ついた部分から腐ってしまうため、紙やプラスチック製のネットやトレーで保護して運びます。
スーパーの葉もの野菜売り場。多くの野菜がフィルムやパックで包装されている。もし、包装せずに並べておくと、すぐにしなびてしまう=東京都港区で10月16日
ミニトマトの呼吸量の計測実験。大気中には酸素21%、二酸化炭素0.03%程度が含まれているが、びんの中にミニトマトを入れて一晩置くと、酸素は11.7%に減り、二酸化炭素が8.1%に増える。それだけミニトマトが呼吸しているわけだ
これまで食品包装を研究してきて、特に青果物は包装を改良することで廃棄するものが大幅に減ると確信しています。
例えば肉や魚は冷凍して運べるので、包装の出番があまりありません。一方、輸送の過程でいたんで売れなくなる青果物は、全体の10~16%に上ります。包装でもっと保護性を上げて廃棄する量を減らせれば、生産量を増やさずに供給量をまかなえます。特に農産物で生産量を5%増やすのは、大変なことですからね。
北沢さんの研究室と日本モウルド工業で共同開発中のトマト専用トレー。古紙を再利用した環境にやさしい素材で、すぐれた吸水性や適度な保湿効果、高いクッション性が特徴だ
2025年4月に開設予定の食科学部は、今の家政学部食物学科を発展させた新学部です。北沢さんの食品包装学研究室は、新設の食科学部食科学科に属します。
「私たちが研究する内容は変わりませんが、より科学的な視点から食品包装を研究していきたいですね。例えば、ドレッシングやソースを、最後の一滴まできっちり使えるようにパッケージを改良するなど、まだまだ食品ロスの削減に包装ができることはたくさんあると思っています」と北沢さん。
日本女子大学のキャンパス=日本女子大学提供
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