地球上で最も種類が多い生き物は昆虫です。名前がついているだけで約100万種といわれ、環境に合わせて仲間を増やしてきたすごいヤツらです。チョウやハチなどおなじみの種類だけでなく、ちょっと変わった昆虫の面白さ、不思議さにも触れてみませんか。(「Newsがわかる2024年9月号」より)
東京・上野の国立科学博物館(科博)で10月14日まで開かれている特別展「昆虫 MANIAC」は、多様性に富んだ昆虫について奥深い解説や貴重な展示で親しんでもらおうという展覧会です。
英語のMANIACとは、 物事に熱中し非常に凝っていること。みんなが知っていることの、ほんの少し先に広がる多様性の世界を紹介しています。
昆虫は確認されていないものを含めると約500万種ともいわれ、毎年数千の新種が発見されています。
大きく分けるとカブトムシの仲間(ホタル、テントウムシなど)、チョウの仲間(モンシロチョウ、アゲハなど)、ハチの仲間(ミツバチ、アリなど)、ハエの仲間(キンバエ、カなど)、カメムシの仲間(セミ、アメンボなど)の五つのグループがあり、昆虫全体の約9割を占めます。体の構造や形、生態(生物が自然の中で生活しているありさま)のほか、さらに細かい特徴で分類されています。
カブトムシの仲間、オオセンチコガネの飼育展示=国立科学博物館の特別展「昆虫 MANIAC」で7月12日
特別展の会場には、それぞれ専門の昆虫の分野を紹介する五つのコーナー(扉)があります。マニアックな標本や動画、最新研究などを集めた驚きの世界が広がります。
◆他の昆虫をコントロール? コマユバチ
「ハチの扉」では他の昆虫の体内に卵を産み付け、その虫の栄養で幼虫(昆虫が体を大きくする成長期の姿)が育つ寄生バチの一種、コマユバチを紹介しています。
寄生されたシャクトリムシ(ガの幼虫)は、コマユバチの幼虫が体の外に出て作る繭に他の虫が近づくと振り払って守るような行動を続け、やがて死んでいきます。まるでコマユバチがシャクトリムシに「子守」をさせるコントロールをしているような不思議な生態です。
コマユバチの一種の幼虫の繭(中央の白いかたまり)を守るような行動をするシャクトリムシ(国立科学博物館提供)
◆雄であり雌である ギナンドロモルフ
カブトムシの仲間は世界中で35万種以上が知られています。「カブトムシの扉」では、雄と雌の特徴をあわせ持つギナンドロモルフと呼ばれるカブトムシの標本が展示されています。
普通の雄には頭と胸にツノがあり、メスにはツノがありませんが、ギナンドロモルフは胸にだけツノがあります。研究者でも、野外で生きる姿をこれまで一度も見たことがないという貴重な標本です。
左からカブトムシの雄、ギナンドロモルフ、雌の標本=「昆虫 MANIAC」で7月12日
ギナンドロモルフは上から見ると雌と見分けがつきにくいが、横から見ると、胸の部分から上に先端で二つに分かれたツノが出ている(国立科学博物館提供)