ハザードマップを生かす【地図がわかる】

 日本列島は近年、豪雨によって川があふれたり、土砂崩れが起きたりして、人命がうばわれる被害が相次いでいます。

 この夏(2020年)も九州や東北で豪雨災害があり、これから台風による被害も心配されます。海の近くでは、地震による津波におそわれることもあります。自分のいる場所がどれくらい危ないかが分かる「ハザードマップ」を知り、命を守る行動につなげていきましょう。【木村健二】

◆ハザードマップって何?

 英語の意味をいうと、「ハザード」が「危険」、「マップ」が「地図」です。自然災害が起きた時に、どこに、どのような被害が出そうなのかを予想し、色分けするなどして示した地図です。

 自然災害にはさまざまな種類があり、市区町村などがその地域の災害に応じたハザードマップを作っています。主な災害を挙げると、洪水(川があふれた時)▽土砂災害(がけ崩れ、土石流、地すべり)▽高潮(台風などの影響で海水が堤防を越えた時)▽津波(津波が陸上におしよせた時)▽火山(噴火による噴石や火砕流)――などがあります。

 2018年7月の西日本豪雨では、51人の犠牲者が出た岡山県倉敷市真備町で、浸水が予想された場所と、実際に浸水した場所がほぼ一致していました。こうしたことからハザードマップの重要性が高まっています。

◆どこにあるの?

 ハザードマップは、市区町村の役所・役場に行けば、実物を手に入れることができます。他の地域から引っ越してきた場合には、引っ越し先の役所・役場で手続きをする時にもらえます。

 わざわざ知りたい場所に行かなくても、その場所のハザードマップを見ることはできます。国の役所の国土交通省は、全国の市区町村のハザードマップを探せる「ハザードマップポータルサイト」を設けています。「わがまちハザードマップ」の画面から、知りたい市区町村の名前や災害の種類を選べば、ハザードマップにたどりつきます。また、洪水や土砂災害、津波などのリスク情報を一つの地図に重ねられる機能もあります。

◆どうやって見るの?

 洪水について毎小編集部を例に考えてみましょう。毎小編集部は、東京都千代田区一ツ橋1の1の1の「パレスサイドビル」にあります。千代田区の洪水ハザードマップは、荒川版と神田川版の2種類があります。それぞれのハザードマップでパレスサイドビルの場所を見てみます。

 荒川は千代田区から離れた東京都の東部を流れていて、荒川版でパレスサイドビルへの浸水は予想されていません。神田川版は千代田区を流れる神田川や日本橋川があふれた場合を想定していて、パレスサイドビルのあたりは、深さ1㍍以上2㍍未満か深さ0.5㍍以上1㍍未満の浸水が予想されています=このページの冒頭の地図。

 水害からの逃げ方は、大きく分けて「垂直避難」と「水平避難」の二つがあります。垂直避難は、逃げる時間がなかったり、すでに浸水が始まったりした場合の逃げ方で、自分がいる建物の屋上や高い場所に上がります。水平避難は、川などからあふれた水がこない高い場所へ逃げます。

 ハザードマップの神田川版は、じょうぶな2階以上の建物への垂直避難をすすめています。毎小編集部はパレスサイドビルの3階にあるため、洪水が起きた時は編集部でしばらくやりすごします。

◆どう備えればいいの?

 自然災害には、地震のように予測が難しいものと、雨や風による風水害のように予測しやすいものがあります。風水害に備えるために、あらかじめ作っておくことをすすめられているのが「マイ・タイムライン」です。マイ・タイムラインは、災害が起きる数日前から時間を追うごとに自分がとるべき行動を決めておく計画です。

 2015年9月の関東・東北豪雨で茨城県の鬼怒川があふれ、大きな被害が出ました。これをきっかけに国や地元の自治体が減災対策協議会を設け、マイ・タイムライン作りを広げてきました。計画を立てる時には、ハザードマップで自分がいる場所にどのような被害が出そうかを確認し、災害が進んでいく段階に応じた避難行動につなげます。

 この協議会では、小中学生向けにマイ・タイムラインを作る資料をまとめた「逃げキッド」を提供しています。東京都でも「東京マイ・タイムライン」を用意しています。

◆どうやって逃げるの?

 災害から逃げる行動に移るためには、防災情報をしっかり読み取る必要があります。災害の危険度は5段階の「警戒レベル」で伝えられます。

 「警戒レベル3」でお年寄りや障害のある人の避難を始め、「警戒レベル4」になると全員の避難が求められます。警戒レベル4については、災害の危険が迫っている時に自治体が出す「避難指示」と「避難勧告」がありますが、違いが分かりにくいため、「避難指示」に統一されることになりました。

 最も危ない「警戒レベル5」は、すでに災害が発生していて、命を守るための最善の行動をとります。

 実際には災害の性質を見極めることが大切です。大きな災害に巻き込まれそうなら、時間に余裕があるうちに思い切って、遠くの安全な親戚や知り合いの家に避難(縁故避難)するのも手です。避難所へ行く間に被害にあうおそれもあり、危険をおかして逃げ出すよりも、自分のいる場所でやりすごす方が安全な場合もあります。

 今年(2020年)は新型コロナウイルスの感染が広がっているため、避難所にたくさんの人が集まれば、密になりやすくなることにも注意しましょう。(2020年9月2日毎日小学生新聞「ニュース知りたいんジャー」より)