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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

ようこそ図書室へ【成城中学校・高等学校編】

成城中学校・高等学校は137年の歴史を持つ男子校です。学校開設から脈々と受け継がれてきた「社会に有為な人材を育成する」という理念の下、学業をはじめクラブ活動や生徒会活動、学校行事などに積極的に取り組んでいます。
そして図書館では今、変革が進行中。司書の三野紗矢香先生にお話を聞きました。

挙手方式で80人の図書委員が誕生!

三野先生が赴任したのは2年前。まず「本の見せ方を変える」ことに取り組みました。「背表紙しか目に入らない並べ方だったので、本の表紙を見せるスタイルに変更しました。さらに、色々なテーマの展示を増やしました。そうすると“本の顔”にぐっとひかれて、手に取られる確率が高くなるんです」――この変革には、三野先生の「書店経験で養った」センスが発揮されたようです。
貸し出される本の数も増え、最近は授業や展示で紹介した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)『あのころはフリードリヒがいた』(岩波書店)『海と毒薬』(新潮社)などが人気です。

また今年から、「図書委員はクラスに1人」という人数制限を撤廃。やりたい人みんなを受け入れた結果、6学年、7クラスで80人、1クラス平均2名が手を挙げました。彼らのやる気が図書館をより良く変革することが期待されています。

イベントのアイデアが噴出

三野先生がこの春、新図書委員たちに「どんな活動をしたいか」を考えてもらったところ、「とても1年ではやりきれないほどたくさんのアイデアが集まった」そうです。例えば「リレー小説大会をやりたい」「公募で図書館のオリジナルキャラクターをつくりたい」「館内BGMを流したい」「独自の展示をつくりたい」などなど。

「活動はそれぞれ、やりたい委員がチームを組んで進めています。すでにキャラの募集は始まっていて、50を超える作品が集まっています。秋には、『マニアの本棚』と題した展示を行う予定で、歴史・鉄道・パソコンマニアの生徒が準備に取りかかっています。早くも『部活の先輩からマニアを引っ張ってきていいですか?』なんて声も出ています。全校生徒を巻き込みながら広がっていくといいなと思います」

授業と図書館の連携を強化

ここ数年、多くの学校で「探究学習」が導入されています。生徒自身が課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、議論をしたりする学習活動です。国語を教える吉光樹先生は、この探究学習の場に図書館を活用しようと考えました。そこからスタートしたのが「点検読書」という試みです。ざっと、「教師が教科書からテーマを決め、司書が関連する本を40冊チョイス → 5人・8班の各班に5冊を割り当て、各人が1冊6分で内容をざっと点検 → 班で話し合って1冊を選び、発表を行う」という流れです。「発表がメイン」ながら、吉光先生には「年間100冊の本に触れてほしい」思いもあるそうです。

「吉光先生の授業ではこの1年、『脳の働き』『SDGs』『言葉は文化遺産』『子どもの権利』などをテーマに、図書館で点検読書の授業をやっていただきました。おかげでいまや他学年・他教科にも広がって、図書館の空いている日がないくらいです」

図書館の“変革の波”は、今後、学校全体に広がりながら、さらに大きなうねりを巻き起こそうとしています。